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ヒロユキ様、ありがとうございましたv 前篇


 15000HIT感謝企画より!


 参加していただいたヒロユキ様に!

  《カズマorキングカズマ視点の久遠寺タウンOZ物語り(仮)での話》



      です!

 


 

久遠寺タウンOZ物語り(仮) 佳主馬視点  (15000HIT御礼企画より)

「不思議な夏休み」                       2010.04.22.

 

 

 池沢佳主馬は、中学一年の実業家である。………、青年実業家である。(むしろ、少年実業家…)

 彼の趣味は、プログラムいじり、だった。

 その影響がどこから派生したのかはわかってはいないが、久遠寺タウンの小さな電気やさんを営む母親の兄が影響していた可能性はある。

 趣味は高じて、それはなぜか職業になった。

 そんな彼は、中一の現在、すでに納税者である。

 

噂の八月一日、彼等はやはり池沢家にもやってきた。

ピンポーン。ガチャリ。

………。

ウサギ? ―――何故に。

心から首を傾げた出会いだった。

「きゃああ、もこもこだわああああああ」
 かわいいかわいいかわいいいいいいい。

 いつのまにか来ていた母さんが、隣にいた小さな羊のアバターを抱きしめていた。

 ……。

「―――ま、いいか」

 母さんがいいなら。

 目の前で、じーっと佳主馬を見つめていたウサギのアバターはその瞬間笑顔になった。

 そして、そいつは暴挙に出やがった。

 ひょい、ガシッ!!

「ちょ、おい、離せよ!!!」

 抱きあげられた佳主馬の足が宙に浮いたのは当然だった。

「―――くそ! …いいか、これからお前がボクを抱きしめるのは禁止だからな!!」

 指さして宣言したら、すごく落ち込んだそいつはうじうじと床に座り込んだ。――体育座りだ。

 いい気味だ。―――ボクより背が高いお前が悪いんだからな!!

 心からそう思った。

「―――名前は、なんていうのかしら? ウサギさんは?」

 既に抱きしめていた羊のアバターとは名乗り合ったあとらしい、聖美が笑顔で尋ねた。

 ちらり、とこちらを見たあとで。

 

「カズマ。――で「キングカズマとかキングとか呼ばれることもあるわよね?」す」

 

 …重複した。

 どうやら、キヨミと名乗るらしいその羊アバターが、喋り出したカズマの言葉を遮ったらしい。

 

「―――ちょ「でも正式名は、カズマだから間違ってもないのよ」っと…」

 

 …。

 ごめん、いじめてごめん。

 なんとなく、反省した佳主馬だった。

 でも……。

「ふううん。―キングカズマ、か」

 ――いいじゃないか。

 にやりと笑った。

 自分のためだけのアバターが、王様だなんて最高じゃないか。

 久しぶりに、大声で笑った佳主馬だった。

 

 

 

 

 

「―――ふう」

 昨日から作業が一気に進みだしたプログラムがなんとか形になった。

 次は、試運転だ。

 ことん。

「………」

「…ありがと」

 のどが渇いていた佳主馬のためにカズマがPC横のミニテーブルにオレンジジュースを置いた。

 果汁100%で、しっかりと冷やしたもの。(氷なし)

 ごくごくごく。

 一気飲みしたあと、そこに置いたらカズマはそれをかたづけに行った。

「―――いいかんじ」

 ぽつりとカズマは呟くと、両手を伸ばして疲れをとった後。―――再びプログラム作りに戻った。

 

 たとえば、食卓での話。

 佳主馬がなんとなく、今日はソースよりもケチャップにしようかなとか思っていたら、「……はい」とかいいながら、カズマがケチャップを差し出してくるんだ。

 たとえば、暑い日の夕暮れ。

 なんだかPINO(アイスの商品名)が食べたくなった、とか思ったらお使いにだしてたカズマが欲しかったイチゴ味のPINOを買ってきてくれたりとか。

 たとえば、昨日の昼の話。

 あまりの暑さに畳の上で扇風機の前で昼寝してたら、いつのまにかカズマが一緒に昼寝してたとか。

 そんな日常が。

 

「――不思議だね」

 

 いいながらも、佳主馬の心はそれを喜んでいた。

 

 

 

 

 

 ある日のこと、お使いに出したカズマが帰ってくるのが遅くて。

 どうしたんだろう、とか思いながら待っていた。

 ようやく帰ってきたカズマに「遅いよ」って言おうとしたけど。

 どこかその日のカズマは違ってて。

「――――遅くなってごめんなさい」

 嬉しいのか哀しいのかわからない顔で、そう言った。

「…おかえり。――待ってたよ」

 一つ一つの言葉につまりながら答えてみれば、カズマは泣きながらボクを抱きしめた。

『 これからお前がボクを抱きしめるのは禁止だからな!! 』

 そう言った佳主馬の言葉をずっと守ってきたカズマだったのに。

 そんなカズマに言う言葉なんてなかった。

 声を殺して泣いてる、自分のアバターは声にならない声で呟いた。

 

『 ただいま 』 

 

 不思議だね。不思議だね。いつも言ってる言葉なのに。

 おかえりなさい。と、ただいま。の言葉。

 何故だか、すごく心に響いた。

 30分後、震えていたカズマの身体が鎮まる頃。――『暑い!!』と言って、佳主馬はカズマを蹴り飛ばした。

 もらい泣きした涙が一つ、カズマの赤い服の上に落ちてることは佳主馬だけの秘密だ。

 

 

 

 

                            →後篇に続く。

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