銀ちゃん、落乱世界へ行くシリーズ。
 

「地獄と混乱の多発性」

　　　　　　　　　２０１２．０２．１６～

　　　　　　１

「―――地獄ってここにもあったんだ」　

「……」

「……」

　ちゅいーん。

　黒色火薬の匂いがします、目にしみる。

　ただいま、万屋一同。

　上は銃撃戦、下はサバイバル。

　逃げ場所なくした落乱世界とやらの地獄に足を踏み入れた模様です。

「「ジジイのくせに、彼女が二人だと！！？」」

「立派あるね、……見習うアルよへたれども」

　神楽が新品のスカートについた汚泥を見るような目線で、ハモった二人を見た。

「「人生、終わった……」」

　全ての命を賭けた戦いがすでに終了していたと知った敗残兵の声で、地面に額づいた銀時と新八だった。

　汚れ疲れた身体を清めたい一心で、忍術学園のお風呂の鍵を持っているという大川平次渦正学園長を探しに来たのだが。

　見つけた相手には、べったりと二人の女性の姿がはりついていた。

『そんなバカな……！？』

『よりによって複数！？　ボクなんてたった一人さえもいたことないのに！！』

　どうみても彼女にしかみえない姿をみて、つい自分の彼女いない歴を暴露してしまったのは、とおめがねだった。

「ちがう！　新八だ！！」

　…やかましい、地の文にまで律儀に突っ込むなへたれ。

「とうとう堂々と悪口言い出したよ、こいつ！！？」

　通常のキャラクターは決して地の文にはつっこまねえんだよ。そんなお約束破りなことすんのはおまえらくらいだろう、気づけ。

　地の文にまで虐められるほどに己のヒエラルキーが下降しているとは認めたくない眼鏡が震えていた。

「ううう。―――　主人公ってこんな立ち位置じゃないはずなのに」

　一言確認させていただこう。

　――――キミって本当に原作の主人公だったの？

「俺だろ？　主人公」

「違うね、この可愛い私あるよ」

「ボクです！！　（たぶんきっといまでもきっと！！！！）」

　堂々と主役の座を狙う万屋一同に、泣きながら突っ込んだのは平凡主人公ではなくへたれ不幸主人公の座を担う新八その人であった。

「…で結局入園するんですか？　しないんですか？　銀さんたちは」

　にこにこしながら受付をしていたのは、１年は組の生物委員である夢前三治郎。隣には同じく生物委員の三年い組伊賀崎孫兵がいた。

「……三治郎。出来れば、あそこの人生の勝利者にしかみえねえ老人をこっちに呼んできてくれないか？」

　ふるふると指差した銀時の指をじっと見つめた後素直に学園長を見た三治郎だったが。

「―――　残念ながら、当方ではお客様同士のトラブルに繋がりそうなことには一切関与は致しません」

　ぺこんと頭をさげて断った、笑顔は優しげだがきっちりと断るところは断る男の子、夢前三治郎だった。

「どうみても、もてない男によるもて男へのリンチの呼び出しにしか見えませんよ？」

　夢前の判断は正しいと思いまーす。

　言葉尻こそは年齢を立ててくれたかのようだったが、もてない男子認定をした時点で彼の心の中での万屋の立場が知れた一幕だった。

　ナクナク入園料を払って入園した万屋を見送ったあとで銭を数えていた三治郎と孫兵のもとにやってきた生物委員の一年ろ組初島孫次郎が、とある大事な情報を持ってきた。

「大変で～す～。孫兵先輩～、三治郎～。―――小町が出産してしまいました～」

「「え？」」

　まじで？

　さて、極楽と地獄。

　万屋一同はどちらに進んでいるのやらね。

　　　――――――――→　２　へ

　とうとう、こちらのシリーズでまでもが長い話になりそうです。

　前回からの期間が空いてはおりますが、しっかりと完結目指してがんばりますね＾＾；

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