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二次創作、版権に絡んでおります。 やおいが分からない方、嫌いな方は訪れないことをお勧めいたします。申し訳ありません。 pc・携帯両用サイト。 (検索避けスミです)

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衝動 ④

 おはようございます。
 今日も寒い。―――指が冷たいよう。;;

 今日も、衝動ですが。
 ちょっと、シニカルというか、現実の暗さがあるというか。
 ――――御紋の根っこで、ネガティブのなにかが潜んでるのでしょうね。

 補足に、明るいのを付けて、ごまかしてみようとしましたが。



 ――――無理でしたら、やめていいですよ。(笑)



 病院という場所では、なにか特殊な場所のイメージを抱きます。
 実際には、生活の場所としてしか機能してないところもあるでしょうが。

 それでも、共通のものは、あると思います。

 生死をいつも薄く感じさせてくれる場所、―――――そんな気がするのです。



 A音さんとのメールで、「手品師の成人佳主馬とちび健二の助手が、病院慰問してくれたら、御紋は這ってでも行く」という会話が、ネタでした。(笑)

 萌え萌え~の会話が、こうなった。(不思議)

 ちなみに、実際に入院してる患者が、いつもこんなに弱弱しいわけではないですよ。皆さん、それなりにたくましいものです。(笑)






 よければ、つづきでどうぞ。







  「癒されてね」

 

                               2009.10.26.

 

ぱちぱちぱち。

まばらに起こるお愛想の拍手。

長期に入院する患者たちのために開かれているのは、有志ボランティアによる手作りくさい発表会だ。長い連休の間、使われていないロビーでは御近所サークルによる草笛だとか舞いだとかが披露されている。

消毒用アルコールと彼岸の匂い。

真っ白な病院独特のものばかりが蔓延している。

虚ろにみている患者の顔が、居場所を失ったものの孤独を感じさせた。

「さあて……しまっていこうか」

 しまっていこう!

 ちっちゃなむにむにの手が、佳主馬の横で振り上げられた。

 ええい。そこは「おうっ!」と答えるところだろう。

 …おうっ?

 水族館のアシカのように小首を傾げられた。―――癒されるじゃないか。

 

 


 

「さて―――今日はこんなマジックを準備してみました。種もしかけもありません。――――ほら、健二。このトランプをめくって見せて」

黒いシルクハットとマントは、手品師の印。追加でステッキがついたなら、もう完璧。

それは世界共通のお約束である。

白い手袋は革製で、つるつると滑るトランプを器用にも扇の形に広げて見せた。

 とことことやってきたのは、小さな幼児。佳主馬と同じ格好をして、いわれるままに観客の正面に立って、佳主馬の広げたトランプに手を伸ばした。

「―――ん、と。……えいっ! ―――――あ、れ?」

 つるっ。

 若干大きめな、それでも小さい手袋は、しっかりと根元を抑えられたトランプの上を滑って、健二の幼い顔にクエスチョンマークを浮かべさせた。

「なーに、やってるんだい。健二!」

 場を盛り上げるには、大きなアクションが一番効果的だ!

 そう教えてくれたのは佳主馬の師匠だ。

 師匠の教えてくれたままに、大げさなほどの身ぶりと手ぶりで、健二の行動を嘆く。

「いくら、小さな手とはいってもトランプくらいはつかめるだろう? さあ、もう一回だ!」

 うん!

 可愛い笑顔と子供特有の高い声。今日の場所柄、高い平均年齢のお客さま方は微笑ましくその仕草をみつめている。

 今度こそ、と健二が今度は慎重に一枚だけのカードに手を伸ばした。

 その表情は真剣で、だからこそお客様たちも真剣に幼い子供の姿を応援している。

「よーし、そうだ。…そうやって、一枚だけ好きなカードを引くんだぞ!!」

 頑張れ―。

 母性を刺激されたのか、後ろの方からは健二に対する応援の声が上がる。それが女性の声であったことは予想のうちだ。
 ありがとう。

 にこっと、そちらを向いてお礼をいうのは仕込みではなく、この子の性格だ。――だからこそ、子供嫌いな佳主馬の助手をやっていけているのだけれども。

「うん、行くよ! 佳主馬師匠!!」

「よーし。その意気だ! 健二!」

 まわりの観衆はもはや二人の虜になっている。
 どのようにして、気持ちよく観衆を騙して喜ばれるのか。――それが手品っつーもんだぞ佳主馬。

師匠が教えてくれた言葉は、佳主馬の心の奥の芯に灯っている。

「えいっ!!  ……あれ? 」
 二度目の挑戦ももちろん、失敗で終わる。それは様式美だ。
 やっぱりな。
 そう言いそうな表情のままに、にこやかに笑い合っているのはお客様たちだ。

 ぶうううう。

 小さな口をとがらせる健二。

 ぜんぜん、こわくないよ健二。…むしろ、笑いを誘ってるよその頬っぺた。

 あらあら。

 前の方の席に座っている品のよさそうな老婦人が、上品にそれを笑ってみせた。

 さわりたいー、あのほっぺー。

 後方から聞こえる若い女子の声。……さっきと同じ声じゃないのか今のは。

「ほーら。ふくれるんじゃないよ健二。お客様に失礼だろう? さあさあ、早くトランプをめくってくれよ。せっかくの手品が見せられないじゃないか」

「……佳主馬師匠が意地悪するからだよ」

 膨れた頬のままに、健二が言った。

「はあ? この俺様が意地悪だとっ!!?  どーこがっ!!」

 くるりと一回転して、佳主馬は観客にも問いかける。

 べつに、私は意地悪なんてしてませんよねぇ?

 ははは。意地悪だよ。意地悪じゃないわよー。

 賛否両論の答えが、観客席のあちこちから聞こえた。

「―――じゃあ、今度は絶対にトランプ引かせてよっ! 師匠!!」

「はいはい、わかったわかったわかりました! だから早く引いてくれよ健二。トランプ広げたままなのもつらいんだぞ? 」

 はいどうぞ!

 三度目の正直は、日本古来の伝統である。

 トランプは今度こそ素直に健二のもとへと渡り、手品はめでたく披露された。時間でいえば20分ほど。短いなりには成功したほうだろう。

 

 

 

 

 とことことこ。

 片付けをしていた佳主馬のもとへ、観客席に引きとめられていた健二が戻ってくる。

 そのポケットには、今日の癒し担当の少年に捧げられた色とりどりの飴やチョコやお菓子の類で一杯だった。

「ねえ、師匠。―――今日のお花は貰ってもいい?」

健二が尋ねてくる。

「ああ。――どうぞ。…そういうと思って、よけておいたよ」

 今日の手品に使った生花が5本ばかり。しまった手品の道具入れの上に置かれていた。

「ありがとう師匠!」

 満面の笑みは、いつものことだ。

 握りしめた5本の生花をもって、健二は再び観客席へと戻っていく。

 小さな手品師を最後まで見送ろうかと残っていた観客たちが、不思議そうにそれを見ていた。

「はい! 今日は手品を見てくれてありがとう。また今度、お会いするまで元気でいてね」

 車椅子に座っていた老婦人が、差し出されたその言葉と花に驚いていた。

 おやおや、…私に、くれるのかい? まあ、うれしい。なんと嬉しい…ことだろう。 

 5本しかない花のうち。一本ずつに分けて、裸のままの生花の見舞に、年老いた老婆がぽろりと涙を零した。

 それは次に健二が渡した、始終怖い顔をしながら、最後まで手品をみていた老人や。細い手足で、点滴と管をつないだままだった若い少女もおなじこと。

 世間は連休。ここは病院。集まっているのは、家にも帰れない孤独な老人と、医療を受けねば自宅へも帰れなかった孤独な若人。―――会いたいのに、会えない。生きたいのに生きられない。

 此岸の果てで、彼岸の淵。

 泣くことさえも無理やりに押し込めて、退屈という名の孤独に目を伏せる場所。

 たった一本の生花と、たった一言のお見舞いの言葉。

 ――――また今度、お会いするまで元気でいてね。

 純粋な子供の一言は、あまりに無邪気で、残酷すぎる。―――それでも、すがる場所を見つけたと心は騒ぐから、涙がこぼれるのだ。

「やっぱり。今日も皆に泣かれちゃった」

 ―――いいのか? あれはおそらく両刃の剣だ。


 病院尉問の手品師をしてくれないかと頼んできた友人に、連れて廻っている健二のことを伝えた。

 いいんだ。

 ひどく疲れた顔をした友人は、そう答えた。

「―――それでも、喜んでくれたんだろう?」

「うん!!!」


 明るい太陽のような笑顔。

 ―――薄い暗闇に慣れ親しんだものにとって、健二の純粋さはまぶしすぎるんじゃないのか?

 一回目の病院尉問を終えた佳主馬が、感じたことを言わずには居られなかった。

 人口の太陽を飾られた、清潔な箱庭。―――そこで、生活しつづける箱庭の住人たちに、本物の太陽を見せたならどうなると思う。――――地下のモグラが地上で生活を始めたようなものだ。

 倒れてしまう。

 隠し続けた感情を、全て陽光の下に引きずりだされて。

「――だったら、いいさ」

「……なら、いいかな?」


 へへ。

 佳主馬は荷物を束ねて、尉問を済ませた挨拶のために、ナースセンターへと向かう。

 脳裏には、見てしまった現実に取り組んでいた友人の顔。

 それでも。


 ―――生きながらに死んでいるような顔をしているよりはいいだろう?


 

 疲れた顔した友人が、隠しきれない現実の重みに泣いているようにみえたのは。




 

 

 ――――――きっと、佳主馬の気のせいじゃない。

 

 

                                             了 BY御紋

 

 

 これは現実とは違う話です。これはいっておきます。物語のために脚色されたところは多々とある。

 しかし、現実の重さ。患者の孤独。――― 此岸の果てで、彼岸の淵。

 これらは、きっと。間違ってはいないんじゃないかと思っています。

 

 なんとなく、病院尉問についてのメールをした。萌えを語った。そしたら、こんな話になった。

 ――――どんだけ、根っこがネガティブなのか自分。(汗)

 





                         ―――――――――2009.12.22


 「今日は、ありがとうございました」
 
 訪れたのは、ナースステーション。―――看護師たちの居場所。

 「いえいえ、こちらこそ。患者さんたちを元気づけていただいて、ありがとうございました。――――とても、嬉しそうでしたよ、皆さん」

 恰幅の良い看護師が、師長の名札を胸に付けている。

「なかなか、あれほど正直に歓声を上げてくれることは 、めったにありません。…本当にありがとうございます」

 頭を下げられた。





 「健二、おまえも挨拶…」
 きゃああ、ふにゃふにゃああ。
 可愛い!!
 振り返った先では、若い看護師たちが健二を囲んで、キャッキャとしていた。
「――――」
 どうしようかと、健二を呼ぼうとした手を持ち上げたままでいたら、そっと後ろから声をかけられた。
「――――やめておきなさい。―――ストレスのたまってる彼女たちに、今の癒しを奪うことは、――――――誰にもできません」
 おそらくは、ドクターですらも。
 あきらめるように首を振ったのは、たぶん、看護師の責任者。
 ――――どれだけ、癒しを求められてるんだ。
 遠い目で、虚空を見つめた。

 
「ねえ、そしたら、健二くんも手品ができるの?」
「いいえ、まだまだなんです。――――上手に、道具を持てなくて…」
 しゅん。
 正直者な健二は、自分の手品の腕前についてを素直に告白している。
「見てみたかったねえ。―――練習したら、また来てくれる?」
「…はい! 佳主馬師匠と修行してから、また来ますね」
 頑張ります!!
 きゃわきゃわと、会話はどこまでも転がっていく。
 こちらとしては、ただ見守るほかはない。
 ちなみに。
 先ほど、佳主馬に看護師からの癒しを奪うなといった師長は、すでに退散している。
 若い看護婦たちに、「キリのいいところで、解放してあげなさいよ」と声をかけ、健二の頭をなでた後で。
 ――――どうしろっていうんだ。
 ちょっと泣きたいのは、今の佳主馬の正直な気持ちだ。
「目指せ、師匠を超えるんだ! 」
「ううん。師匠を超えるのは、難しそうですが。――――かっこいいですから、師匠は!!」
 きらきらと、健二も看護師たちとの会話に盛り上がっている。
「じゃあ。――――師匠に、お嫁さんがきたらどうするー?」
「え?」
「ふふふ。―――あんなにかっこいくて若いのよ。――――お嫁さんが来たら、…健二の修行はみてられないから、やーめたとかいわれたら…」
 どうする?
 ―――いわねえよ!!
 あやしげに、健二に言った若い看護師に心の中で突っ込んだ。
 ――――絶対に、Sだ。あの看護師。
「ええええええ!! 困ります!!」
「ふふふ。――――どうする?」
 あわてる健二を、さらに追い詰める看護師。
 えっと、えっと。
 くるん。ぱたぱた。ぐいっ!!
 健二が、いきなり佳主馬のもとへやってきて佳主馬の腕を引っ張った。




「じゃ、じゃあ。―――――僕が、佳主馬師匠の、お嫁さんになります!!」



 だったら、修行、みてもらえますよね?


 
 湧き上がった看護師の歓声に、気を遠くさせながら、佳主馬が思ったことは。

 ――――看護師って、パねえ。
 
 それしかなかったのである。




                                    了 by 御紋



 うん、佳主馬。―――たぶん、それはSじゃない。萌えだ。(笑)
 怪しい看護師の、健二へのちょっかいの掛け方は、御紋の性格が出てますね。ww
 ――――いじりたいよう、ちび健二さあん!!

 そんな感じで、後味が少しでもよくなったなら、嬉しいです。(ぺこり)



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会社員(夜勤あり)
自己紹介:
活字中毒の自覚ありです(笑)。
映画「サマ―ウォーズ」が大好きです。
健二さん至上主義。カズケン信者。栄さま神格化傾向あり。――――――です(笑)。

こちらでは、二次創作を展示させていただきます。
著作権は御紋にありますので、個人で楽しむ以外に、ネット他に使用することはおやめください。
(二次配布、禁止ですよ)

御紋の生息地は、ついったです。
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