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41歳健二さんの感謝 ⑤-2

 小磯健也(オリキャラ)は、健二さんの祖父。本家の大殿、大奥さま大事のじいちゃん。剣道4段。
 健二さんは、5歳から上田にて育った方。(母は東京で仕事)

 とりあえず、これがこのシリーズの基本設定。

 41歳健二さん、どぞ!


 

   2

 

 

【 俺は、誰かを大事にすることが出来るのかな】

 

 陣内家へと遊びに来ていた高校の夏。

 いつでも、にぎやかな陣内家でふと漏れた本音。

 誰にも聞かれていないと思っていた。


『 おや? 健二さんじゃないかい?』


 どうやら、畑仕事の帰りだったらしい彼女が聞いていた。


『お、大奥様っ!!』

『そんな七面倒臭い呼び方なんかしなくてもいいんだよ、健二さん。栄おばあちゃんでいいってば』


 苦笑する人は、まだ若くて黒髪だった。


『そんなことをいったら、うちの爺さまに殺されます!』

『ははは、健也さんがそんなこと… しないと思うがね』

『…大奥様、できれば眼はそらさないで言ってもらえますか』


 自宅の元気な頑固爺をネタにしながら、それでも穏やかに話せる関係を作ることが出来ていた。

 だがそれでも、それだけの仲だったはずだった。

 あのときまでは。

 

【 … 覚悟はあるかい】

 

 記憶は蘇る。

 健二の心の奥で。

 

【己の信念をかけて、一つのことをやり遂げようと努力することができるのなら。】

【居場所を護るために、己の力を磨けるなら】

 

 もしかしなくても、きっと美化されている。

 だって、それはあまりにも美しすぎる記憶だから。

 

【きっと誰かを、】

【きっと何かを、】


 それでも、健二はその記憶を捨てられない。

 だって、それはもう小磯健二という男の中心に組み込まれてしまったものだから。

 …希望、だったから。

 

【 大事に、守っていける男になれるさ 】

 ――健二さん、なら。

 

 泣いてしまったあの記憶。

 大丈夫だと、信じてもらえたその記憶。

 心の底で空いていた虚無に、薄い膜が張られた。

 心の淵で疼いていた傷が、少しだけ癒された気がした。

 

【 …僕は、まだハイとは言えません】

 そんな存在に成れる自信などありはしません。

 

 得られなかった母の愛をどこかで求めていたのだろうか。

 与えられなかったものが、この身に生まれることがあるのだとは信じられなかった。

 

【いつか…】

【ん?】

【いつか。――僕がそんな男に成れたと思った時、もう一度訊ねてもらえますか? そうしたら、きっと僕は……っ! 】

 そのときこそ、僕はきっと…。

 

 自信を持つという言葉の意味。

 覚悟を持つという言葉の意味。

 その違いを知らなかった。

 

 

【…あんたならできるさ】

 

 

 泣きながら告げた高二の頃。

 祖母の友人で、祖父の大恩ある人で、友人たちの祖母であり義母であったその人に甘えた。

 無限に在りすぎた将来を、虚無のように感じていたあの時代。

 今を迎えるために必要だった、あの選択の時代。

 あのときに、貴女に出会えたことが俺の幸い。

 

【絶対に、健二さんならそんないい男になれるとも】

 

 綺麗な歯を見せて笑った貴女に、救われた少年時代。

 あれから必死で努力をした。

 大好きだった数学も、田舎だからと諦めてた進学も、爺さまに強制的にさせられていた剣道も。

 精一杯というのはこういうことかと理解するほどに努力した、今につながる全ての路。

 

そういえば。

笑った貴女は優しかったけれど、すこしだけ意地悪だった。

だって知ってたはずでしょう?

 

【 …きっと、誰かを護れる男に成って見せるから!! 】

 

 あのとき初めて。

 将来の自分への夢を語った。

 まだ為し得ていない未来への展望を語った。

 辿り着くための、努力を誓った。

 

 ―― それを、『覚悟』と呼ぶのだと。

 

 きっと貴女は知っていたはずだろうから。

 

 

「――いつも、俺は貴女には敵わない」

 

 

 落ちる涙はその瞬間に発生した。

 ようやく直視できた老女の死に顔が、苦痛にゆがんでいなかったことが何よりもの救いでありました。

 

 ――― 生まれて生きて、出会ってくれて、ありがとう。

 

 

 

                                  了 by御紋

 

今回は、栄さんは原作に準じられました。

回想シーンではまだまだ若い栄さんですが、90歳代というのは意外に乗り越えにくいんですよ。(身体的に)

 ただ、栄さんは上手に適応されてるように見えたので本当はもう2・3年は生きられたんじゃないかなという思いは、…あるのですけどもね。

 そして、この原作シーンを書くたびにいまだにぼろぼろと泣いてしまう自分の思い入れにびっくりです。

 ――― 大好きだ、サマ―ウォーズ。

 

 

 

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健二さん至上主義。カズケン信者。栄さま神格化傾向あり。――――――です(笑)。

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