《弐（ふた）》

石野かなという少女がいる。

　彼女は少し変わっている。

　時代劇が好きでドラマが嫌い。

　なんでも、時代考証だとかが不十分すぎて見てられなくなるのだという。

　そんな彼女は、時代小説が大好きだ。

　お好みは赤穂浪士を扱ったものだとか。

　彼女は言う。

「確かに、日本人の大好きな展開ですし武士の大義が書かれていて好ましいですわよ。ただ、いくらなんでもお会いもできなかった私の先のお父様をあまりにもひどく書かれたりするのはちょっともの申したい気分にはなりますわね」

　お父様の褒め言葉ばかり聞いていただけに違和感があって読み進められなくなりますのよ。

　そんな彼女は図書委員会に入っている。

　彼女がカウンター当番の時間帯は図書館が満員になるので、その時間には図書館は利用しないのが賢明であるというのは真面目な受験生がたの見解である。

 


　　　　　　　　　　　　　　　　→　参（み）へ。

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