「サギチョウ…っていうか」

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　２０１０，０１，１４．

　くくく。

　――――（病んでんなあ）

―――病んだ笑みで。

　友人であるがゆえに、付き合っているのはそんな二人の親友である池沢　佳主馬（１７）。

　いや、まあ。

　正直言うと、気持ちがわかるだけになんともいえなかったりするのだ。

　いつもどおり、物理部にはパソコンオタクと呼ばれる三人がそろっていた。―――ただし、時折佳主馬はその名称を免除されることが多い。（主に、ファンである女生徒によって）

　物理部という名前のパソコン部では、今日も元気にほぼ私物扱いされているパソコン大明神様がウイウイ唸りながらも稼働されていた。

時刻は夕方。そろそろ、冬の気圧配置によって、天気が崩れるらしいからと早々に帰宅するように言われていた佳主馬が自前のパソコンをかたずけた直後のことであった。

びりっ。

　ひそかに、外へと繋がる窓が帯電した外気の震えを伝えた直後。

「――――――――――――」

「――――――――――あ…」

　先ほどまで、締め切りの近いというバイトであるＯＺのバグ取りに勤しんでいた二人が固まっている。――――そりゃそうだ。だって、バグ取りのバックアップとってなかったもん、こいつら。

　先に片付けておいた自分のノートパソコンをそっと寄せながら、佳主馬は心の中で思った。

　――――母さん、早く帰れと言っておいてくれてありがとうございます。

　池沢家の最強主婦に、素直に感謝した長男であった。

　くくく。

　現在の居場所は、東京にしては多めに積もった雪がまだ残っている久遠寺高校の裏庭です。

　現在の外気温は、――――２度。

　寒いです。

　その寒さにもめげずに、いそいそと病んだ笑いを浮かべながら、目的のためにこそこそと蠢いている親友二人が、黒く病んでて怖いです。

　めったにない物理部コンビの狂いっぷりに、若干気持ちが引いてしまった佳主馬である。

　目の前には、集めてきた古新聞古雑誌。――――それから、先ほど届いたばかりのバイトの給料明細書。――――しっかりと棒引きされているのは、冬の雷で飛んでしまったバグ取りバイトの成功報酬分。

　ふふふ。

　くくく。

　あてにしてたそのバイト代が入らないことで、壊れたのが目の前の病み高校生二人。

―――はやく、治せ？　その病み。（生温かい目）

「イエス、チーフ！！」

「ははははは、燃えてる燃えてるよ、もう！！」

　あまりの哀れさに、佳主馬はつい直視出来なかった。

　その後につづいた二人の絶叫が、まだ層の厚そうな冬の雪雲に吸い込まれていった。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　了　ｂｙ御紋

　思ったのは左義長である。

　いわゆる小正月に門松や注縄飾り、書き初めなどを燃やすあれね。よく子供会とかでしてたやつ。

　地域によっては、「とんど焼き」とか「ほっけんぎょう」とか「福間三九郎」とか「歳の神」とか「あわんとり」とかエライ呼び方が違うらしいね。（ウィキペディア参照）

　ちなみに、御紋は小学校の催事としてやってた記憶があります。呼び方は、普通の「左義長」。

　もうちょっと、きゃいきゃいさせるつもりだったのですが。

　今日の夜勤明けに雪かきしながら、どんがらがっしゃんとうるさく雷が響いているのに、「まあた雪ふらせるつもりか貴様！」と心の中で突っ込んだ御紋の怒りが、こんな形で表れてしまいました。

　一月半ばで、雪かき今年３回めってあり得ないんですけど。――何だ、この天気（怒り）

　―――――ちょっと、何してんのよ、あんたらあ！！！（怒り）

　―――――うぐっ！！

　ちょ、健二しっかりしろ、吐きだせ、吐きだせええ！！

　ちょ、掃除機持ってきてえええ！（焦り）

　――――――。（白目）

　いいから、逆さにするぞ、おい！―――――――生きろおおおおお！！（必死）

[2回]