「紫煙のごとく」

　紫煙――――煙草の煙を古くはそう呼んだという。

「――――見たの？」

「――――」

　佳主馬が見たのは、まさかの光景。

　上田の家の離れの陰で、座って隠れて煙草を吸っていたのは、小磯健二。

　鼻についた独特の匂いが、未成年に禁じられたものだということが分かった。

「―――内緒だよ」

　立ち上がった靴の底で、地面に落とした煙草を踏み消した健二さんが、すれ違いざまに佳主馬の口にキスを落とした。

「ん…」

　時間で言うなら、十数秒。

　絡ませた舌の表面がやけにざらついた。

　舌にこびりついた苦い煙草の味が、やけに――気になった。

「―――口封じだよ」

「―――」

　去っていった健二さんの背中をみながら、佳主馬は赤くなった頬と口を、手で押さえていた。

「――――なに、あれ…」　

　佳主馬の頭の中に、今までの健二さんとは別の「小磯健二」が生まれて、動き出す。

　―――もう一度、逢いたいんだ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　了　ｂｙ御紋

　身内での、御紋初チャットレンタル試運転中のネタより。

　合言葉は黒健二さん。――→隠れ煙草健二さん。―――→女王健二さんへと移行。＾ｑ＾美味い。もぐもぐ。