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夢の夢さまに捧ぐ!

 カズケン大会でお会いしました。
 まさかな、という設定で、目からうろこでございました。

 ―――夢の夢さま、リクエスト。

 「パラレル。万作さんの一番弟子で、佳主馬の兄弟子な健二さんのお話」。


 お持ち帰りは、夢の夢さまにのみOKです。


 
* 2010.07.24. 御指摘がありました。第三次産業はサービス業であり、万介さんのような水産業は第一次産業にあたります。
 御紋の勘違いによるミスでした。御指摘ありがとうございました。修正させていただきます。



 

 夢の夢さんリクより。

 「 海の男は、大きいのだ 」

                            2010.07.18.

 

 

 

 小磯健二には、師匠がいる。

 第一次産業の一角を担う陣内水産の社長がその人だ。

「おまえは、いつまでたっても上達せんなあ」

 心にぐさりと突き立つような一言は、勘弁してください。師匠。

 (一応)思春期の健二なのでうっかり脆いハートに重傷を負いそうです。

 漁師の道を選んだ健二は、ことごとく向いてない気がしてならない。

 海の男は、酒に強くなれ。(まだ未成年です、師匠)

 海の男は、夢に強くなれ。(船酔いしながらみる夢なら任せてください、師匠)

 海の男は、女に優しくなれ。(昨今、女性の方が強い気がします、師匠)

 海の男は、…泳げ? …な?(…カナヅチですいません、師匠)

 最後の言葉だけは、切実だった。

 師匠の言いつけを守れていない困った一番弟子ですが、それでも大事なことだけは守っていきたいんです。師匠。

「――おまえも、いつかはそうなれるさ」

 豪快に笑う師匠の笑顔は、健二にとっては困ったもので、怖いもので、――いつかなりたい、夢の海の男でした。

 

 

 

 

 

「――で? 健二さんは今年も来ないつもりなわけ?」

 本家の宴会。

「え、あ。―――たぶん、きっと、なんとか行ける…」

 ハズ。

 自信なさげに会社のネット回線を通して健二が答えた相手は、健二の大切な弟弟子だ。

「いつも来る来るとかいって、来たことないじゃないか」

 一度くらい、兄弟子として手合わせくらいしてよね。

 ふてくされたように告げる相手の顔は、年相応の中学生のそれだ。

「―――すいません」

 しおしおと顔をうなだれて答える自分が年相応の高校生に見えるものなのかは、はなはだ疑問ではある。

「夏は忙しいからさ、いまは僕がネット器機関連の微調整おこなってるわけだし……」

 苦笑するしかない立場である。

 昔は、腕と力と運があればよかったはずの第一次産業も、時代の流れには逆らえない。

 家庭の事情で職を求めていた健二が、ネット関連の機器の扱いに困っていた万助のバイト募集に申し込んだのが、最初のはじめ。

 取説片手に仕事を始めて、気づいたときには会社の必要要員として入職していた。

「そんなことは、聞いてないの! ―――――来るの? 来ないの!? 」

「行かせていただきますっ!!!」

 直立不動の体勢で、返事をするのは当然のことだった。

 勢いのあまり、椅子が5m後方に飛んでいったことはこの際、どうでもよろしい。

「なら、いいよ」

 ぷつん、と切れたネット回線の片側で。

「――――兄弟関係って、こんなんだったっけ?」

 一人っ子の身として疑問符を浮かべた。

 兄弟子と弟弟子の関係が逆じゃないのかと、突っ込むべき友人がここにいないのは残念なこときわまりない。

 

 

 

 

 

 先に行ってるぞ、と告げて向かった師匠の後を追うようにして、初の長野入り。

 電車で向かうしか手がないとはいえ、かかる時間の長さに眠気が襲います。

 電車をのりかえてからはせめてもの快速で。

 うっかり乗り過ごす前にたどり着けたのは、幸いでした。

 バスで行こうかと思いもしたけれど、路線の自信がないために豪勢にもタクシーに乗車。

 師匠、夏のボーナスありがとうございました!

 叫ぶ健二は、地上ではやや方向音痴の属性を持つ青少年だ。

「ああ、伊勢山。なんだ、婿入りか?」

 ふつうにそういってのけた古株らしきタクシーの運ちゃんに否定を返して、到着したのは。

「おおおおお。――――お城か? 」

 1人で叫びたくなるのも仕方がない。

 間違えてませんようにと祈りながら、内門にまでたどり着く前にうろうろと悩んだ風情の少女を発見。

「どうしました?」

 つい、尋ねてしまった。―――それが、運の尽き。

 

「――――そうよ、私の婚約者よ! 」

 

 何も言うまもなく連れてこられて、宣言された。

 師匠、助けて。

 脳裏に頼る相手の顔が見えたけど。

 

[ そうか。おまえもそんな年になったんだなあ ]

 

 1人で勝手に納得する姿しか、思い浮かびはしなかった。

 ―――師匠、もうちょっと弟子の言葉を聞いてやってください。

 事前に思い浮かべたままに、言ってのけた師匠に対してそう心の中で告げる。

 にこにこ笑顔で、否定を許してくれない少女に屈服しながら、思い浮かべたのは同じ敷地のなかにいるはずの少年。

 ―――到着したら、メールするね。

 そう言っておいた兄弟子の言葉を信じたのか、この宴会にはいない少年。

 数えるほどしかあったことのない弟弟子に、このような事態が発生していることを理解されたあとこそが恐ろしい。

 ネットを通じてよく対話する少林寺拳法の達人にして、OMCの王様である池沢佳主馬に出会って怒鳴られるまでは、もうあと数十分。

 

 

  

                                            了 by御紋

 

 

 

 夢の夢さんからのリクエストでした。

 パラレルで、万作さんの一番弟子で、佳主馬の兄弟子、な健二さんのお話。

 楽しかったです。(^w^)

 

 

 

 

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