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二次創作、版権に絡んでおります。 やおいが分からない方、嫌いな方は訪れないことをお勧めいたします。申し訳ありません。 pc・携帯両用サイト。 (検索避けスミです)

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彼らを思うと、やはり御紋も苦しくなるのですよ。

「どうしてもせつないんだ、この子たちは。(捏造せずにいられるか!!)に続いております。

 あの設定での、お話です。
 あまりに長いので、折りたたみました。

 基本は、御紋はアナログ人間です。
 ので、ちょっとちがうんじゃないのかというところもありますが。(汗)
 そのときの御紋が受け止めたなりの文ですので、そのまま上げさせていただきます。
 ちょっと引っかかって気になる、という方は、読まないことをお勧めしますよ?


 では。


2009.12.17 修正。――コピーの抜け落ちが数か所。(泣)チェックしていきます。すいません。(涙)
2009.12.20  さらに修正。―――修正が修正になってなかった。ごめんなさい。楽しようとしちゃダメだわ。よくわかった。―――またおかしいなと思うところがあったら言ってください。御紋、頑張りますから。



「苦しい。くるしい。狂しい」     ☆
            原作におけるふたりの話。

 



 

 食われたままに、彼らは破壊されたのだ。

 粉々に。

 砕かれて。

 コワサレタ。

 ―――――たった二人で。

 
 身のうちに潜まれた。それはあたかも遅発性の毒のようなものだった。



「あのメールは、君ですか?」
 

 アバターというには、重たい。

 それを不思議と警戒しなかった自分は、愚かだったと今でも思う。

「マスターからの返事です。―――どうぞ」

 ぎょろりとした目。串刺しにされそうな口。そして、額に浮かんだハ―トのマーク。

 添付された、その答えを。 渡すために近づいた。

 本当に、それだけのつもりだったのに。

「あ、大きなハ―ト。…可愛いですね」

 近づいた分だけ、盛り上がったそれが見えて。

 先日、マスターが見ていたケーキ屋のデコレ―ションを思い出したから、呟いただけだったのだけれども。

ぎしっと相手が止まったのを、確かにケンジは見たのだ。

その次の瞬間には、ケンジは彼に食べられていたのだが。


  全てのアバターが解放されたとき。

その背に輝く光輪を枷として、彼はケンジたちを閉じ込めていた。

その膨大な数を、たった一体のAIが封じていた。彼の求める知識への道具として。

細くとも強固な鋼の糸。それが、彼の意思の具現であった。彼の意志の本質でもあった。

それが、神経をつなぎとめるニューロンのように。縛り付け、繋ぎ合せ、混入させ、機能させた。彼の体の一部として。彼の手段の一として。

苦しい。

そう思っていたのは、決してケンジだけではなかった。

広大な電子世界のなかでは、ちっぽけなプログラムの一つ。それがアバターがもつ、アカウントの正体だ。

必要不可欠でありながら、それらはたった一つの意味しか持たない。

それでよい。

それがよい。

そう人間が決めたから。

アカウントには、一つだけの、絶対唯一の役割がある。

マスターを電子の世界へ旅立たせるための手形であれという役割。

使用者だけが記載された、白紙の切符。

あとは各々のマスターが書きこむだけ。

それは行き先であったり、帰る場所であったり、価格であったりとするのだけれども。

だからこそ、彼らは小さなプログラムだ。ただ、付与されるべきスペースを持っているというだけの。

くるしい。

そんなわずかな機能しか持たぬ彼らが、膨大なプログラム量をもつAIと繋ぎあわされたのだ。

プログラムが変容しかねないほどの情報の負荷であることに変わりはあるまいに。

苦しい。くるしい。くるしい苦しいくるしいクルシイくるしい苦しいくるしい狂しいクルシイくるしい。―――――――――――――クルシイ。

 そこに、変化はあらわれた。

 21個のアカウント。そして、くりひろげられた逆転劇。解放されゆく仲間たちに、希望を持たぬアバターなどいなかった。

 そして、檻は壊されて、細く紡がれた鋼の糸は収束していく。一体のアバターへと。

 解放だ。

 解放されたのだと、アバターたちは還っていく。己のマスターのもとへ。

 ただ、ケンジは還れなかった。

 数多のアバターは解放されて。

 己よりも早くから、ラブマシーンに取り込まれていたものたちまでもが解放されたのに。

 ケンジは還れなかった。

 その身には、全身を拘束するようにラブマシーンの意志である鋼糸が巻きついていたから。

 (―――マスターっ…)

声を上げて助けを求めることさえ、ケンジには許されなかった。


 二人になった。


 
 問いかけることも許されずに、巻きつく意志だけがケンジを束縛した。
 失ったものさえ、追うこともせずに。

ラブマシーンは凶行へ及ぶ。

最後に残った、最初にして最強のカギ。電子の世界の、白紙委任状。

OZの世界を踏み荒らすそれを手にして、ラブマシーンは「あやかし」を落とす。

ケンジのマスターである小磯健二のいる場所へ。

 (マスター)

最後にケンジがマスターのもとを発った時、彼はそこにいた。おそらくは、まだそこにいる。

 (マスター)

ラブマシーンは、ただその抵抗を笑いながら楽しんでいる。

ゲームをもてあそぶ、ルールを遵守しない、童子のように。

ゲームというものは、本来お互いの立場が対等であるがゆえに成り立つというのに。

 (マスター)

ケンジは、遠くから延ばされたそれを感じていた。それは、すでにケンジがラブマシーンと同化したかのように、過ごしてきたためであったのだろうか?

ラブマシーンは、まだ気付かない。

そっと、ケンジは影を創る。ラブマシーンの中にあるケンジの内に、ラブマシーンが気づけない境界を築く。

そして、細く細く送られてくるその命令を、そっと、そこへ誘導した。

それは、ラブマシーンを弱体化する指令だった。

そっと、そっと、それらはゆるゆると、ケンジの中に満たされていく。

  ラブマシーンは気付かない。

  設定しなおした暗号を、解かれる瞬間に再び設定しなおすことに夢中になっている。

  そっと、そっと、それは確実にケンジの中を満たしていく。

  くるしい。

精いっぱいに広げた己のスペースで、容量を超えいく速さでその指示は充満していくのだ。くるしいのは当たり前だ。 

 ――まだだろうか。まだだろうか。まだ、彼を止めるだけの力を持たないのだろうか。この中にあるものは。

 もう隠しきれない。もう溢れてしまう。もう―――。



  ピ――――――。 解体プログラムを全て受信いたしました。



 小さく聞こえたプログラムの完遂音。
 ケンジは、限界だとばかりに受信しおわったそのプログラムを、ラブマシーンの中枢へと送りこむ。ラブマシーンの弱体化を組んだプログラムを読み込ませるために。


 指がポリゴン化し、動きが鈍くなり、そして、感覚が鈍摩していく。


 それに気づいたラブマシーンは、じっと指を見つめる。己をみつめる。
 ラブマシーンの中に、ずっといたケンジを見つめる。

それが、初めてだった。

食べられた後、ケンジをラブマシーンが見つめたのは。

 (マスター)

 (どうしてでしょうか。僕はくるしい)

 (こんなにも)

 (こんなにも)

 

ポンっ

 
 再び暗号が解読されて、ラブマシーンはケンジから目をそらして、ゲームの快楽へと身を投じる。

射的をするかのように、カギを構えて暗号を再設定する。最弱にまで落とされたアバターの力が、片手でカギをもつことも許さないのだ。

最強の王を倒したことが嘘のように。

もはや残り時間は少なく、この静かな最終決戦の場所には、他には誰もいない。

 (終わるのでしょうか)

 (終わるのでしょうか)

 (この世は)

三度、暗号が解読される。

もはや、これが最後だろうという時に、その英雄はあらわれた。

一度目はチャンピオンベルトを。

二度目には己のアカウントそのものを。

失って、喪って。

それでも、三度と立ちあがって、ラブマシーンを追ってきた。

 



「邪魔するなあああ―――――――――――――!!!!」




 王でありました。

 キングでありました。

 敗北からさえも立ち上がった、孤高の王者でありました。

 繰り出された拳の下には包帯が巻かれていました。

それは、とてもとても強い拳で。

それは、とてもとても強い怒りで。

孤高の王者は、もはや孤独ではないのだろうと思う強さでありました。

 

逃げることもできず、避けることもできず、生きることもできず、ただただ、その強さのもとに、ラブマシーンは破壊されました。

粉々に。

砕かれて。

コワサレマシタ。

 
   粉々に壊されました。破棄されました。ゴミになりました。


 ―――――たった二人で。

(マスター)

 (不思議ですね、それでも僕は)

 

食べられたあとで、見た光景。

巻きつかれた鋼糸の痛み。

直接、ねじ込まれたラブマシーンの意志。


(壊されてしまった今のほうが、僕は苦しくないんです)



 ラブマシーンは、やはり子供だったのだとケンジは思う。 
  それは拙い悪戯や、遊戯への好奇心、本能への忠実さだけを言うのではなく。


『あ、大きなハート。…可愛いですね』

たった一言。

些細な自分への褒め言葉がすごくすごく嬉しかったのだと。

言葉で言い表すこともできなかった。

逃がさないように、食らいつき。

逃れられぬように、拘束した。

その幼稚性にこそ、ケンジはラブマシーンが子供であったのだと思うのだ。


 

  (もしも、君が子供の姿であったなら)

  (もしも、僕が君の片割れでいられたのなら)


 

   ともに過ごすことも出来ただろうに。




 

  (君が望んだように)

  (僕が望んだように)



 

    ケンジは、欠片と砕け散る己のプログラムを見つめながら、喪われゆく生まれたばかりであったAIのそれに手を伸ばしていた。

 


                                       了  by御紋

 






基本、病み系はよくしらないんだけれども、ラブケン話を文字にすると原作部分ってシリアスにならざるを得ないと思うんだ。

この後は、粉々になったプログラムを拾い集めて、ちっさいラブマとケンジのなごやか家族になるとよろしいかと。

どうして、絵師さんがたはここまで後に残る萌えを落としていけるのかなとおもうよほんとに。

読み返してたら、ラブケンというより、精神的にはケンラブになりそうな設定なことに気づいた。遅いよ。(泣)



 

 

―――――たった二人で。




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活字中毒の自覚ありです(笑)。
映画「サマ―ウォーズ」が大好きです。
健二さん至上主義。カズケン信者。栄さま神格化傾向あり。――――――です(笑)。

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