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執事なカズケン。ようやく、本編なんて、そんな…。



こんばんはー。

遅くなりましたが、更新。

「YES、MY LORD――――我が君」

②  クインローズの咲く庭で。



どうぞ?




 

「YES、MY・LORD―――我が君」② 

 :クイーンローズの咲く庭で。

 

 

 

 

 

「よ? ご機嫌いかがで? 公爵さま」

 ししし。

 にやにやと笑いながら入ってきた男を見て、健二は持っていた羽根ペンを机に置いた。

 手元の引き出しに置いてあったベルを鳴らして、誰かを呼ぶ。

 リ――――ン。

 質のいい陶器で作られたハンドベルが、美しく澄んだ音で館中に響いた。

 ぱたぱたぱた・・・。

 いつもは足音をたてることのないソークストーン邸の召使たちも、やはりこの男の登場であせっていたのか珍しいことに忙しなく駆けてきた。

 ぱたん。

 開かれた扉を見ることなく、健二は告げる。

 

「これから、ティータイムの時間ですよ。お客様にはラムを多めに垂らした紅茶を用意してあげてください」

「…ししし。流石は、抜かりがないね。―――わが親族にして、ソークストーン公爵の健二さま?」

 

 来訪者の名前は、侘介。――――健二の遠縁にして、後見人。健二にとっては、数学の家庭教師でもあった男の名前であった。

 

 

 

「最近は、どうされてたんですか?」

 なかなか顔を出されないので、心配してたんですよ?

 今日のティータイムは自慢の薔薇園で。―――クイーンローズが咲き誇る庭園につくられた東屋で行われた。

「ん?」

 勝手知ったるなんとやら。何処からか、用意してきたレポート用紙にざかざかとペンを走らせながら、侘介が健二の問いに答えた。

「ああ。―――隣の国で、新しい数式が発表されたって聞いたからな」

 ちょっと、旅してきた。

 ざかざかと、書かれていく数字と見慣れない式の在り方に、健二の目がきらめき出している。

 ――――こういうところが、似てるんだ、この二人は。

 二人の間に立って、静かに紅茶をサーブしていたカズマは、冷静に見える表情の裏でため息をついた。

「―――今日の紅茶は、アールグレイでよろしかったでしょうか?侘介さま?」

「ん? ああ、おれ。 ―――紅茶よりもビールで頼むわ」

 …あいかわらず、空気を読まない変人である。

 そして、そんな侘介の失礼な言動を聞いているはずの、我がご主人様はというと。

「で?これがその数式ですか?」

 侘介の描き出す数式を覗き込む健二の表情は、とても嬉しそうだった。

「そうそう。ここの公式がさ…」

 対する侘介の返事も同様である。

 ――――これだから。

 カズマにとっての記憶の中で、健二と侘介の会話は基本的なところで、数と式の話が出ないことがまずない。

 健二との初めの出会いの時、侘介は言ったらしい。

『俺は、公爵なんざ興味はない。―――だから、お前にはしっかりと貴族さまとやらになってもらわなきゃ困るんだよ』

 俺が、自由になれないだろ?

 そう言った後、侘介は健二の後見人への申請をしてきた。

 侘介は、学者である。数式者。―――――国々を回る流離の学者。口が悪く、品のあるわけでもない。ただ、――――その天才的な頭脳によって、彼は各国から歓迎を受けていた。

 一つの国に定着することのなかった彼が、ただ健二の後見人となったがために、8年の間、この国を離れることがなかったのは異例のことだった。

『いつか。―――――いつか、お前は女王を支えるものになる。――――学べ。俺は、そのためにここにいるんだ』

 変人だと言われていた。

 それでも、その頭脳を認められていた。

 高貴な身分というにはあいまいなその人は、戯れのように現れて、健二に語った。

 この国のこと、外の国のこと、そして、学び手に入れた力で、人を守ることが許された立場に生まれたことの幸福を教えてくれた。

 

 

 

 

 

 ―――もういやだ、ボクには向いてないんだ。

 

 押し寄せてくる公爵という立場の重圧に、健二はよく庭に隠れた。―――あのクイーンローズの咲く庭で。

 香り高く咲き誇る薔薇にうもれるようにして、泣いている健二を探すのは幼い佳主馬の仕事だった。

『健二、見つけた』

『カ…ズマ』

 しゃっくりをあげながら、健二はそのバラの垣根の下に伏せるようにして、泣いていた。

 健二の母が大好きで植えさせたという、クイーンローズのもとで。

『…また、髪の毛ぐしゃぐしゃだよ』

『ふ…え…え――――ん』

 細い子供の泣き声が庭の片隅でうまれた。

 泣きだした健二の頭に乗っていたバラの花びらを、そっと払い落してカズマはその横に座りこむ。

 健二が泣きやむまでの時間、カズマの裾を握りしめたまま泣いている健二と過ごしていた。

 その間だけは、誰も二人を探しには来なかった。

 花を痛めることになるから、花壇のなかには入らないようにといつも言ってくる怖い顔の庭師も、

健二を執務に戻らせようとする執事も、誰も。

 土の匂いと、バラの匂い。――――指でぬぐった健二の涙が塩辛かったことだけを覚えている。

『健二は……。』

 

 

 

「―――カズマ? 」

 不思議そうな健二の声を聞いて、カズマは、紅茶のおかわりを求められていることに気付いた。

「―――申し訳ありません。ご主人様」

 気を散じていたことをわびて、再び保温させていたティーポットから、紅茶を注いだ。

「珍しい失態だな。カズマ」

 ししし。

 客人扱いの侘介にその失態を見られたことを嗤われた。

「――――申し訳ありません」

言い訳を発することなく、カズマは詫びた。

「―――何かあったの?」

 健二が心配な顔をかすかに浮かべて、問うてきた。

「安心しろよ、公爵さま。―――この男がこんだけ嬉しそうに笑ってんだ。エロイことでもおもいだしてたんじゃねえのか?」

 ししし。

「――誤解です」

名誉棄損に繋がりそうなことを言われたので、そこはしっかりと訂正したカズマだった。

「じゃあ、何を考えてたってんだ?」

 この公爵さま命の執事どのが?

 笑いながら尋ねた侘介が、それを知らないはずがない。

 健二の傍にいるのを至福としているカズマにとって、健二の相手をしながら思い出すことなど一つしかないということなど。

 健二のことしか、思い出すはずがないことなど。

 

 

 

 

 

あの幼い日々、何も知らないままにカズマはその言葉を紡いだ。

バラの匂いのこもる庭園で。 

 幼いけれども、確かに心から祈っていた思い。

『健二は…。おれのご主人様になるんだろ? おれは、健二だから側にいたいんだ。―――――おれのご主人様になってくれなくちゃ困るよ』

 幼い日の二人の約束は、今も続いているのだ。

『――っく。…じゃあ、カズマはずっとそばにいてくれる?いなくならないでくれる?』

―――お母さんやお父さんたちみたいに。

 泣きながら還ってきた答えを。切なく聞いた。

『じゃあ、頑張る。―――僕は、まだ自分がむいてるとは思えないけど、――カズマのご主人様として立派な人になりたい。』

 だから、一緒にいてね?

 

 約束は守られるだろう。―――――これから先もずっと。

 

 

 

 

 

 

 

「――いつでも。我が君のことを考えていますよ」

 

 

 

 

 

                            了 by御紋

 

 

 

す…すいません。遅くなった。更新。

書くのが難しくて。(汗)

――――たぶん、のんびりと書いてきます。よろしくおねがいしまあす。




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映画「サマ―ウォーズ」が大好きです。
健二さん至上主義。カズケン信者。栄さま神格化傾向あり。――――――です(笑)。

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