「覚悟なら、―――十分に」

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　２０１０、０４、１８．

　覚悟？

　覚悟ならとうに。

　勢い良く、言ってきたのは夏希先輩だった。

　うんうん、そうだね。

　何も言わずに、いきなり婚約者の振りを降ったことは十分にひどいことだよ。今思えば。

　当時は一杯一杯で、文句らしい文句も言えなかった。

　もちろん、惚れた欲目もあったが。

　いまはむしろ『若さって怖いよね』という悟りの境地だから、気にしないでくださいな。

「設定があるの」

　ああ、そう言えばそんなのもあったなー。

「東大生で…」

　ああ、東大。――学生じゃなくて、講演会に行った覚えならあるが。たぶん、４３歳くらいの頃。――まさかの壇上でね。

　そんな、将来のある若者に語ることなどないので、一生懸命に数学の不可解さと面白さの関係とか、数学とＯＺの関係とかについてとかを語った覚えがある。

　…居眠りされてた気がしなくもない。

「旧家の出身で…」

　ああ、旧家。

　うんうん、旧家。

　嫁とりじゃなく婿入りだったら、そうだったかもね。

　陣内家は旧家でしょう？

　旧家＝金持ちとは思わないように。

「あとアメリカ留学から帰ったばっかりってことになってるから」

　――――アメリカ留学。

　…惜しい、ホームステイならしたな。中学一年の夏。

　知ってるのは、佐久間くらいだろ。この話。

　株で稼いだ銭で、コミュニティ仲間の家にお邪魔させていただいた。

　まだ脳内が英語を聞き取れるつくりになってなかったからさ。―――ア・ラ・療・治ｖ

　ｈａｈａｈａ．―――まさか、本当に中学生だとはおもってなかったよ。

　そう笑ったのは、ホームステイ先の宿主だった。

　未来の時にも思ったけどさ、ジョン、お前の腹、もう少しひっこませろや？

　過去世の先輩、兼、今生でのホームステイ先の主であったジョンに突っ込みたくてたまらなかった。

　ちなみに、その会話はお互いの端末で音声入力させたＯＺの翻訳機能のおかげでした。　

あざーす。ＯＺ。

　…ああ、演技力も磨けばよかったかなあ。

　過去の記憶のまま、復唱した自分の言葉の感情のなさに、地味に反省した逆行健二だった。

　そして、夏希先輩。

　――はやく、告白してください。――某叔父さんに。

　覚悟ならしている、とうに。

　―――――俺だけが知る未来を変える。

　それは、世界の改変。

　それは、………小磯健二と篠原夏希の未来。

　そう思いながらも、懐かしむ過去のなかで、やはり愛していたんだろう？　――その愚かな男を。

　…幸せだった。――幸せだったから。

　でも、これは逆行健二さんの基本設定だったからね。

　原作健二さんの過去において、健二さんはその人生を全うしています。

　だから、彼は全てを同じものだとは思ってはいません。

　一度あったことを変えて生きる人生にこそ、意味があると逆行してきた意味を自分に問うた結論がそこでしたので。

　彼は、この人生をそうしようと決断してしまっているんです。

　ふぁいふぁい！！＞＜。。。

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