小話的＾＾「祈りを、捧げよう」

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　２０１０．０４．１９．

「―――何か用？」

　王様。

　たった一人の王様。

　ぼくらは、君が大好きでしたよ。
　王様。

　―――大事で、大切な。
　――――少し照れ屋で、家族思いの――――俺たちの。愛しい王様。

　ぬくぬく。

　―――としたいわけです。

　夏とはいえども、流石の信州。

　そして、旧家。―――隙間だらけの民家造りは寒い。

　…風呂場も寒いんです。　

　ス――――――――――。

　ハ――――――――――。

「…ちびたち、早く出てきなさい！！」

　叫んでみた。

　湯船に潜って遊んでいる腕白坊主どもがいる限り、のんびりとお風呂でまったりできんだろうが！！

　お風呂は、日本人の癒しです。

　それには同意する逆行健二さん（推定通算年齢６０歳）だった。

　まったり、まったり。

　―――精神的には緊張の塊だけどな。

　今日からの三日間。

　五年間の狂気のような運命への足掻きが、通用するのか。

　――――それがわかるまでは、本気で身体が休まるはずがないし。緊張がおさまるはずもない。

　それでも、人間だから。

　――無理をしてはいけない。

　けれど。

　――少しの間違いも犯してはいけない。

答えは、見つかったか？

　――俺が作りだした答えは、正しかったのか？

　裁定は、この三日後に下る。

　――第三次上田合戦の幕開けが迫っている。

「……神様。―――神を救いたいと思う愚者は、何に祈ればいい？」

　ほかほかの身体、―――タオルを首に巻いて歩けば、その先には彼がいる。

　――――永遠の子供を作ることに熱中した男が―――辿り着いたはずだ。

　――――神様が恋しいと泣き叫んでいた迷子が、ようやく。

　ぴ。ぴ。ぴ。

　健二が持ってきた荷物の中。

　―――小さなアラームが鳴っている。 

　世界は―――動き始めた。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　了　ｂｙ御紋

　…短。―――…小話ですね。＾＾；

[3回]