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恐怖にも似た、畏れがある。

 …最強健二さんの改変シリーズ。


「臨むことと、願うこと」

                  2020.04.29.

 

『――電流が流れます。離れてください――』

 

 音声によって、AEDは指示をよこす。

 汗だくになりながら、交代で心臓マッサージを施しているのは、救急の資格をもつ三人の兄弟たちだった。

 万作の指示のもと、聖美がその指示を実施する。

 投与した指示を忘れぬように、メモを残しながら。

 不思議なことに、しっかりと健二の荷物に用意されていた最小の携帯酸素ボンベと酸素マスクを使って酸素を送り込み、胸骨の下を圧迫して心臓への刺激を図る。

「――いっそのこと、心電図も用意してほしかったわね」

 素早い仕草で、指示された量の薬液を事前に保持しておいた点滴ラインを通して、栄の身体に投与しながら聖美が呟いた。

 そんな無茶な、と突っ込むだけの余裕は誰の中にも残ってなかった。

 

 二度目の再試行が効いたのか。

 

『―――心拍が開始しました。マッサージを止めてください――』

 

 事務的に指示するAEDの声に、ホッとしたのはたぶんそこに集っていた家族みんなの本音だっただろう。

 

 

 

 

 

 救急車は無事に陣内家へと辿り着き、再び心拍を打ち始めたとはいえども、まだ気の抜けない状態の栄を運んで行った。

 主治医である万作はもちろんのこと、長女である万里子も共に連れて。

 

 そして残された家族のなかで、健二は宣言する。

 

 

 

「――あんた、なに言ってんの?」

 不機嫌そうに、理香が言った。。

 

「―…ばっっ、かぁあああ?」

 愚者を見つめる目で、直美が嗤った。

 

「――健二、くん?」

 信じられない顔つきで、夏希はただ名前を呼んだ。

 

 

 

「ぼくは、本気です。―――ラブマシーンを倒さなくてはいけません」

 

 健二は、独り――語る。

 

「――――みなさんの力が必要なんです」

 

 喪ってはいなくとも、いまだ死の境界にいる大切な人を置いて。

 

―――世界を救ってほしいのだと。

 

 

 

 

 

 人の心を踏みにじるような、身勝手な願いを語った。

 

        了 by御紋

 

 栄さんの危篤状態は続いています。

 そんななかでの、健二さんの発言を。

 

 ―――家族を大事にする彼等は、どう受け止めるのでしょうか。

 

 ※AEDの音声文については、私が経験した救急講習の記憶から来るものです。

 記憶間違いがありましたら、申し訳ありません。(ぺこり

 

 

 

 

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