「死出の旅路を、帰還の往き路へ変えましょう」

「ログを追ってくれ、佐久間」

　取り出したのは、レポート用紙とシャーペン。

「―――まだ、何かする気？」

　避難を開始し始めた陣内家の人々を置いて、ＴＶ画面の前に正座した。

「―――「あらわし」は、ＧＰＳ誘導だって言ってましたよね」

「――健二、これだ！」

　かたかたかたとタイピングして、電子の海を泳いでいく。

　心のうちに、そう啖呵をきってみた。

白い白い空間。

　誰もいない。

　それはまるで、死出の旅路を模倣したような。

　見えたそれは、最後の扉。

「　パスワードが、変更されてる　」

　予測通りに、ラブマシーンはそんなことをしてくれていたらしい。

「―――――やっぱり、ね」

　苦笑いを浮かべてみた。

　そうだ、お前はそんな奴だよ。

　過去世の記憶のままに悪戯も過ぎる子供に、説教の一つでも説きたいところ。

「――そんなことをいってるばあいか！」

「そうだ。――これはキミにしか解けないんだろう？」

「―――頼む！」

　いつのまにやら、大切な家族たちは健二の傍で見守ることにしたらしい。

　後方では、いまもラブマシーンの解体作業に勤しむ侘介さんの姿。

　…ああ、やはり貴方は変わったのですね。

　すべてをかけて、過去の罪を贖おうと。

　あなたが生んだ、憐れな子を救おうとしたのですか。

　かたかたかたかたかたかたかたかた。

　重複する、入力する音。

「　はい！！　」

　ああ、なんと力強い。

　孤独ではなく、最後まで。

　最後まで、見守ってもらえることの心強さ。

「　――――頑張れ！！　」

　歯を食いしばりながら、すがりつきましょう。

　この大切な世界。

　すべての愛しいものを守るために。

　俺は、―――生きて、戻ったのだと信じて。

　　　　　　　　　　　　　了　ｂｙ御紋

　思い出した。