「予定外って、こういうことですか」

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　２０１０．０５．２８．

　あとは、……トウモロコシ３本くらいでいいか。

　ぱちん、と最近愛用の園芸用ハサミで畑の野菜をもぎ取った。

　新鮮な野菜のヘタとか茎のいがいがが尖ってて痛いな、と思ったのは慣れないうちだけだ。

　いまはしっかり軍手をつける習慣がついた。

　年季が入ると軍手すらいらなくなるぜー、と笑ってきたのは万作さんだ。

　あの分厚い手の平だったら、そりゃ痛くはなかろう。

　過去世でも愛用していた健康サンダルのいぼいぼは気持ちいいんだけどねえ。

　いがいがといぼいぼの違いは大きい。うん。

野菜をのせたザルを胸に抱えて、健二は本家の台所へと向かった。

　トウモロコシはゆでておやつにします。

　残った野菜類は、井戸水に晒して冷たくしておく。これ、基本っす。

　土の上を歩くと、土の匂いがする気がする。

　アスファルトの上だけの人生じゃ物足りないよね。やっぱり。

　辿り着いた井戸では、理一さんが顔を洗っていた。

「……おはようございます」

「ん。おはよう、健二くん」

　細目の職業軍人は、歯ブラシに歯磨き粉をつけながら、挨拶した。

　うわあああ、この人。護衛の自覚ねええ。

　…楽でいいんだけどね。

　最初の健二のもくろみでは、例の件も無事に終わり栄さんも御存命。となれば、高校は休学または転校して、そのまま上田に居候生活しようとか思っていたわけなのですが。

（仕事？　ｐｃと回線があれば十分まわせるよ？）

　え？　なに？　なんかようやくの難問突破、おれはこれから楽しむんだ人生とか思ってうきうきしてた気分を、容赦なく切り捨てられたよ？　あれ？　（泣）

　五年間だけ自由にさせて、って、期限きったのはあんたでしょ？

　笑顔なのに、笑顔じゃない気がした。

　さながら。

　後ろで閻魔さまと鬼子母神となまはげ（国の重要無形民俗文化財）が、がっちりとタッグを組んでるようなオーラがあった。―――怖かった。

　あああ、俺の第二の人生計画がああああああ。

「　子供ってのは、親のもとで育つものだよ　」

　ええ、それはそうなんですけどね！！

　俺、もう６０歳なんですけどね！！（通算年齢）

　ちなみに、久遠寺高校はそういう意味では有利な場所なんだから、絶対に転校は認めませんよ。

　お母様、だから俺休学でいいって……。

　慧眼過ぎて怖ろしい。

　一つのことに打ち込むあまり、佐久間と夏希以外の学校関係者との付き合いがほぼないダメダメ高校生な健二だった。

　……戦いという形にもなれなかったよ。

　すごすごと頷くことしかできなかったお父さんを許して下さい。

　過去世の可愛い息子と娘よ。（注・すでに妻子持ちのいい大人です）

　新幹線で片道一時間だよー？　おかげで俺も週末は休めるしねー。

　うん、母は強いさ―。

　大人との交流はあったのに、子供との交流は手を抜いてた。駄目っ子健二さんですｖ

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