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衝動(的に書いたんだ。)  ①


 まだ、御紋がチャットには参加していましたが。
 スパークに行ったお友達ともまだ会えず、
 チャットで仲良くなった方たちとも、いまほど親しくなかったとき。

 そんなころに、御紋の一人遊び、あるいは衝動的な萌えの消化のために、書いていったssや短編たちです。 
 
 たぶん、これからもそんなことをするでしょう。(笑)


 そのため、区別用に。
 衝動。①②③…と言う風に、題字を付けさせていただきましょう。


 万が一、順番に読みたかったら、おそらくブログ内検索にて、「衝動」と打っていただければざっと見れるのではないでしょうか。





 それでは、どうぞ。







「冬の寒さがいけない」

           

                                 2009.10.14.

夏は遠いね。

あなたがそう言ったから。

あの日から冬が嫌いになった。




 

 

コロンコロン。

アスファルトの路地の上で、下駄が鳴る音はなんとも懐古的に響いて聞こえる。

コロンころんコロン。

抱えた桶には石鹸とタオル。黄色いプラスチックの桶を見て。なんとも漫画的と笑ったのはついさっきのこと。

東京にだって、温泉くらいあるよと言ったのは健二さん。

じゃあ、一緒に行こうよと誘ったのは自分。

鄙びた昭和の匂い。

それがウリだといっていたのは、OZで拾った情報サイト。

なんともモノは言いようだと笑いながらそこに決めた。

「健二さん。何飲むの?」

「うーん…どうしようかな」

湯上りの身体はほっかりと湯気が上がっていた。いつもは真っ白な健二さんの肌がすっかりピンク色に染まっているのをみてどこかで見た気がすると感じる。

ああ、あのときか。

艶美な啼き声。絡んだ手足。暗闇に浮かんだ白い肌の記憶の中、最後に辿り着いた先に浮かぶ。

大切な恋人の膚の色。

「んー。…佳主馬くんと同じやつでいいよ」

悩んだあげくの名案だとばかりに、艶人は笑う。

その笑みに、何度でも恋を告げたくなるのだといえば、きっとこの人は恥じらうんだろう。

「牛乳だよ?」

出逢ってから、もう9年だ。その間に健二は26歳になったし、佳主馬は22歳になった。

もう自分への無力感に泣きだすほどの必死さは失ったけれど、傍にいる人への思いが無くなることだけはありえないんだと知っている。

「いいよ、それで。っていうか、まだ牛乳のんでるの? もうこんなに大きくなったのに」

とっくに身長追い越されちゃった。

笑っていう健二さんに、過去の自分を思い出させられた。

「いいんだよ! それとこれは別なんだから!」

少しでも、初恋のあなたに追いつきたくて。毎日牛乳を飲んだ。黒歴史とはいわないけれども、こっちがそれだけ必死だったことはなんとなく照れ臭いことでもある。後悔してるとは絶対にいわないけれど。

「そこまでいうなら、買ってあげないよ? 健二さんの分」

「わっ。ごめんなさーい。佳主馬くん! 佳主馬さまっ!! 」

 だから、買って?

 拝むように両手をあわせて、小首をかしげてねだってくる。そんなポーズは卑怯だと、言ってやるべきだろうか。

 小銭を握りしめながらそんな会話をした。

 

 

 

カランコロンからんころん。カラン。

風呂上がりの帰り道。ライトアップされた中庭を歩いた。

冬の空気は冷たくて、熱った身体を冷やしたけれどもしばらくすれば耳元と首筋が寒いように思った。

「…むかし、佳主馬くんに言ったよね」

「いつのこと?」

 手入れされた低木の陰で、夜を彩るようにライトが灯っていた。

「冬は嫌いだ…って」

 あれはもう古い話。まだ健二は高校生で受験を前に控えていた。前の年の夏から、陣内家の家族だと認められていた健二は長期の休みになれば、上田へと訪れて佳主馬をはじめとする親族一同で時を過ごした。しかし、さすがに受験生だということで健二は上田への訪れを遠慮したのだ。

 皆がそれを残念に思ったし、佳主馬自身も悔しかった。だが、佳主馬と健二はOZを通して接触することが出来たから、まだ我慢することはできた。しかし、あの日は。

 あの日だけは我慢できずにつらかった。

12月の年末の話。受験のいら立ちをかかえながらも息抜きがわりにと佳主馬とチャットをしていたときのことだ。些細な親戚一同の笑い話をしていた。ふいに健二の応えが止まった。そして、一言は発信された。

夏は遠いね。

そんな言葉につながる会話ではなかった。

会話ではなかったからこそ、そのときの健二の心境が思い描かれた。

今行く。

それだけを伝えて、東京へ行こうとした。実際のところ、即行で健二から聖美に連絡が入り、行くことはできなかったのだけれども。

子供というのは不便だと、どんなときよりも悔しく思ったことだった。

「…うん」

 その一言が、健二の孤独を表していたのだと思う。

 言葉にするにはむずかしい、そんな衝動が誰でもない佳主馬自身に向けて発せられたことは、今から思えば、佳主馬にとっての喜びであり誇りであった。

けれども、まだ幼かった自分にとって。健二が一人であることを思えばそれがたまらなく苦しかった。傍に居てやりたかった。健二の苦しみは佳主馬の苦しみでもあった。

「でも」

 そして、苦しんだ年月は、いま確かに愛情へと昇華された。

「いまは冬も好きだよ」

 佳主馬の傍には健二がいて、健二の傍には佳主馬がいる。

「夏が好きで、春が好き。冬が好きで秋が好き」

「…数学が好きで、温泉が好き。おでんが好きだけど、がんものなかの銀杏が苦手?」

「うう」

からかうように、佳主真が真似れば健二は少しばかりすねてみせた。

「……OMCで戦うのが好きで、拳法が趣味で、少年の頃からプログラムの特許を持ってる!」

「OMCは見るのが好きだけど、操作が苦手。暗算は得意だけど、検算は苦手?」

「…いかは好きだけど、たこも好き。納戸の場所がそろそろ狭いと思ってる!」

「和食が好きで、おにぎりの具はこんぶと梅。おかかも好きだがシーチキンも好き。」

 痴話喧嘩というやつなんだろう。

 そして、けっこうこんな時間を佳主真は嫌いじゃない。

睨みあうように顔を突き合せながらも、二人が繋いでいる手は離れはしていない。

「――」

 健二が大きく息を吐けば、温かな吐息は真っ白な霧になって宙へ消えていった。

 

 

 

「―――――佳主真くんがいるから、ここが好きだよ」

 



 

 

 ためらうことなく言いきるあなただから、いつでもこちらは負けてしまうのだ。

 いつでもあなたに恋焦がれている。

 

                      了  by御紋

 




 穏やかな、9年後のカズケン。
 このころには、いろんなものを乗り越えて、ほのぼのとラブラブしてくれているはず。(信じてます)

 





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映画「サマ―ウォーズ」が大好きです。
健二さん至上主義。カズケン信者。栄さま神格化傾向あり。――――――です(笑)。

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