「本日、恋人ストライキ中！　」

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　２０１０．０８．１３．

　ぷかり。

　水の上に転がるのは幸せだ。

　ぷかり。　

　ＯＺのステージの中には、海を模した場所がいくつもある。

　そこは、別名ＯＺのナンパ場。

　【交流を求めるなら３次元でやれ】とはリア充の言葉だよな、と仮子の製作者は語ったらしい。

　ぷかり。

　波の少ないその場所は、誰もいない。

　なぜなら、ここはプライベート空間。

　―――たった一人のための避暑地だからだ。

　閉じた瞼の裏で、光を感じる。

雨知らずの空の下で、彼女はその大きな尻尾を枕にして水面に浮いていた。

時折小波に揺らされて、ビキニのために露になっている仮子の白い腹が濡れた。

「―――いい感触だね」

　ぷかり。

　自分の背丈ほどもある尻尾を浮き輪がわりにできることを、仮子は幸運に思うべきである。

【　メール　が　１件　届きました　】

　目の前に浮かんだ報せに、仮子は目を遣る。

「　………　」

　差出人の名を見て、それから仮子は再び目を閉じた。

　ぷかり。

【　メール　が　２　件　届きました　」

【　メール　が　４　件　届きました　」

【　メール　が　８　件　届きました　」

【　………　】

　仮子の目の前に表示されたそれらは、重ねられ重複していく。

　それでも、仮子は動かなかった。

　ぷかり。

　天気は上々、海は穏やか。

　それでは、そこにいる彼女のご機嫌は…？

『　―――おーい。仮子。居るんだろ？　』

　増幅していくメールの類を、非表示にしてやった仮子の目の前に、サクマの顔が現れた。

「　……いるけど　」

　ぷくり。

　答える仮子のほっぺたは、大きく膨らんでいた。

『　おーおー。いかにも拗ねてんじゃないよ。いったい今度は何してんのさ、お前ら　』

　ＯＭＣ関連経由で、俺んとこまで救援懇願メールきちゃったよ、おい。

　呆れた声で告げるのは、仮子の親友であった。

　だから、仮子はなお頬を膨らませる。

　ぷっくり。

「　…なんでもないよ　」

　ぷかり。

　水に浮かぶその細い身体が、徐々に沈みかけている。

　仮子の身体が、りきみつつある証拠だ。

『　…そう？　俺が聞いた話は違うけどねえ　』

　なんでも、キングのＯＭＣの表彰式で、花束と一緒にキスを奪ってった女性形アバターがいたって？

　………　爆弾投下。

「　だから！！！！！　しばらくは逢わないって、キングさんにいっておいてよ！！　」

　
  どうせ、ボクは胸ぺったんこだよ！！

　ばちゃん。

　そんな音を立てて、海の底に足をついた仮子は両目からまあるい雫を零しながら叫んだとのこと。

　――キング。すまんが、しばらく別居生活してくれ。

　泣きだした友人兼妹的存在をあやしながら、サクマという名前の保護者はそう呟いたらしい。

　だって、こればかりは仮子が落ち着くまでは無理だ、フォロー不可能だ。

（件のアバターがバンキュッボンのスタイルの持ち主であったことは、サクマだって知っているのである）

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　了　ｂｙ　御紋　

　本日、あきらさんから素敵な残暑見舞いが届いたので。

　そしたら、電波が飛んできたので。

　…全力で拾ってみました。

　あれはあかん、あれは。ビキニのフリルの腹だし仮子はあかん。（萌える…）

　そして、実はあの大きな尻尾を枕兼浮き輪にしてる姿が一番書きたかったなどとはそんな…。

　―――キング、おまえ胸は大きいのと小さいのとどっちが好きよ？

　―――おかしなこと聞かないでよ。

　ケンジさんの胸なら、どっちでもいいに決まってるじゃないか。

　この返事を聞いたとき、俺は『キングパねえ』と思いました。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　（某バカップルの守護者呟き抜粋）

　いけばいいよ、おまえら。どこまでも（バカップルで）………逝けばいいよ。＾ｐ＾