需要がわからない節分　久遠寺　…変。　★捏造キャラ万歳二次創作作品です。

「――――――　何をした？」

　ひくつく頬は怒りの印。

　目の前には散乱した小磯邸の玄関。

　なぜか生臭い匂いがする。

「―――――だって、だって、だって」

　えぐえぐえぐえぐ。

　泣いているのは黄色のブサ可愛い子リス。―――仮ケンジだ。

　心なしか生臭い匂いは彼からしている気がする。

「…………」

　ぽんぽんとそんな泣いてる仮ケンジの頭を撫でているのは兎の耳がピンと立っているキングである。――――愛は生臭い匂いさえも凌駕したらしい。すごいね。

「――――し、し、しししｓ……し？」

　焦ったように笑い続けていたちびなラブマシーンが一生懸命に隠れる場所を探していた。

「………」

　むにいいい。

　と頬をひっぱりたくなるようなすべすべの頬をこれ以上なくぶっ潰すようなしかめっ面で正座させられているのは初期ケンジである。

　やはり、こやつら家庭内ギャングたちもいささか生臭い。

「―――答えろ。――――仮ケンジ、キングカズマ、ラブマシーン、初期ケンジ」

　ふだんは『へたれでチキンな数学馬鹿』と久遠寺タウンでも有名な小磯健二（１７）が鬼のような顔で下知を下した。

　ぴりりと震えた玄関の空気は、一段とその温度を下降させた。

「えぐ…えぐ…えぐ……あの、今日は節分だからって………えぐ…」

「………今年一年健康でいられるようにと」

「し、し。……鬼を追い払って、いいことだけ手に入れる行事……だし、し、し……」

　冷や汗（一部涙つき）を掻きながら、仮ケンジ、キングカズマ、ラブマシーンの順番で説明があった。

「鬼は柊の葉を刺した鰯（いわし）の匂いが嫌いだと聞いたのでそれらを準備したうえで鬼役に（無理やり）任命した仮ケンジを相手に容赦なくそれをぶちまけたところ勢いが良すぎて生の鰯の内臓が噴出したおかげで玄関マットと健二さんのお気に入りのスニーカー一式と扉の内側全面と仮ケンジのＴシャツ＆何故かやってきていた空気を読めない兎の王様もどきが生臭い鰯の匂いを放つ羽目になりました。ちなみに鬼払い役であるボク自身はちゃんと先を読んでピンクのゴム手袋をしておいたのでいつもどおりの真っ白なボクです。―――――以上、本日２月３日の節分における小磯邸の過程であります」

　ノンブレスで言い切った初期ケンジは真顔だった。

「　貴様の根性が暗黒色だああああああああ！！！！！！！！！！！」

　そこに座れ、不思議生命体４種！！

　仮ケンジ、とりあえず泣きやめ。

　キング、慰める前にその真っ赤なモフ毛を洗って来い。仮ケンジ付けていっていいから。

　ラブマシーン、まさか逃げれるとか思ってねえよな？　侘介さんにはおまえの躾については全面好きにしていい許可もらってんだぞ、こっちは。

　それから初期ケンジ。　――――――　貴様には大っきらいなレバーペースト、レバニラ、レバ餃子の食べ放題をプレゼントだ。喜べ、匂いすらも嗅ぐのが嫌いな俺自ら調理してやろう。

　どうやら今年の小磯家での鬼は、去らずにぶいぶい降臨したらしい。

　―――――　ファ●リ―ズの素敵な匂いが、２月の間中小磯邸の玄関では匂うことになりそうである。

[4回]