―――――――。

　仕方ないかねえ、なにしろこんなことは初めてだ。

　死んだなりの魂だ、まだまだ人生初めての経験って言うのはあるんだねえ。

　まあ、死んだ後も人生なんていいはしないんだろうけども。

　聞こえてたのかい？　私の言葉。

　ああ、違う。なんだか、みんな大きなＴＶを見てるよ。

　よく分からないが、電子機器と魂っていうのは相性が悪いのかね。

　何が書いてあるのかとんとわかりゃしないよ。

　まあ、生きてても新しいものに追い付くのはそろそろ難しかったのが本音だがね。

「それ以外の何がある！！」

「ふざけんな、あの野郎ぉ！」

「まだ解体は終わらないの？」

「やってる！」

【十分を切った！】

　だが、必死だね。

　―――おまえさんも、守ってくれてるんだねえ。なんてありがたいことだろう。

「冷静に。まずは退避！　近所の人たちに報せを！　どんな被害が出るかわからん！　行くぞ！」

　なんだろうね、避難だって。

　裏山にあった防空壕だったら、もう潰しちゃったよ？
　いまどきの兵隊さんはそんなもんじゃ間に合わない武器を使うらしいからねえ。

…かたかたかたかた。

　なんだろう、二つの音が聞こえるよ。

「佐久間！　管理棟に奴のログは残ってる？」

【お、ああ】

　…何も言わずに、仕事をするんだねえ。

　避難に急ぐ子供たちを背後に、解体作業とやらをしてるらしい一人の子供を見た。

　ふふふ。

　やっぱり、お前も陣内家の人間なんだね。

　もしも、いま肉体があったなら。

　お前の頭を撫でてあげようね。

　他の子供たちにしてあげたように。
　よく頑張ったねと声をかけてあげたいよ。

…いい子だね、侘介。

「……」

　またかい、全くもって面倒なもんだ。

　次は何で目覚めるのやら。

[2回]