最弱健二さんの物語り。⑦最終話

「　この道程は、生きて死ぬ途（みち）　」

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　２０１０．０７．１２．

おまえは、人をなんだと思っているのか！！

　目標地点は、修正されて。

　落下予測は、――――この大地。

　背負った荷物の中から取り出すのは、いつでも手元にあったレポート用紙とシャープペン。

　めくりあげた表紙の下から現れたのは罫線だけが並ぶ白紙のページ。

[　お。――おう！　]

　どこまでわかっているのか、親友はすぐに返事を返した。

「――まだ、何かする気？　」

　問いかける少年の声に、返事を返す。

「――――昨日の奴みたいにＧＰＳの原子時計にニセの補正情報を送れば…」

[――これだ！　足あとくっきり！！　]

　開かれた新しい窓に表示されたデータ。

「あ……位置情報に偏差が生じて……」

「少しでもコースが変わるかも」

　指摘された可能性に、足を止める家族たち。

「でも、上手くいく保証はないので先に避難を…」

そう言い残して、データを振り返る健二に、佐久間が叫んだ。

[　待て！　無理はするな、健二！　これ以上、身体を酷使してたらおまえは……]

「　嫌だ！！　今しかないんだ！！　」

　避難することを勧めようとする親友に、健二は叫ぶ。

　その数字が、前日に解いたものと違うことなど、もはやどうでもいい。

「―――健二、くん　」

　解きだすうちに、その数字は頭のなかで規則正しい路を作りだす。

　決められたその規則を掴んで、計算して、―――打ち込む。

　「　開いた！！　」

　がしゃん。

　挑戦して、あがいてみせる。

　生きる意味を、いま求める。　

　ざ。――――かたかたかたかた。

「―――はやい　」

「佳主馬、奴の守備力をゼロにした！　

――――奴を叩け！！　」

　ガシャ。

　がしゃん。

　だって。

　―――おかされていく。侵されていく。

　つ、と垂り落ちる血液が不快だと、首の後ろ―――反射のような感覚だけがそう告げた。

　――――そうやって、怒る意志さえも自分は失っていたのだ。

　―――――怒りという意志によって、耐える意志を、あがく意志を。

　ボクは、生まれた。

　―――いつか辿りゆく、死への道程のため。

　まさかの同日終了。

――――半日休みのありがたさと、ポめら様の有難さを思う次第です。

[4回]