時をさかのぼること、本日の昼すぎ。

「　で、どういうことかな、健二くん？　」

　――やめろ、おっさんの声でくん付けすんな。鳥肌が立つ。

「おまえがこっちによこす予定だとか言ってたプログラムの名前がラブマシーンとかだった気がするのは俺の気のせいですか―」

「――　申し訳ありません。うちの相方が暴走した模様です」

　大人ですから、謝るところは謝るよ。自分。

「よし、潔いな。――　それでこそ、小磯だ」

――　……　どういう意味？

心からの疑問をぐっと我慢の大人。

「俺は潔い男は好きだ。――ということで、お仕事です」

　数学が三度の飯と四半日の睡眠よりも大好きな小磯健二さん。―――これ、解いて。

「――――なに、これ」

　こんな状況でさえなければ食いついて計算し始めるに違いない、数学マニア通り越して数学フェチの俺の大好物でした。

「…解いていいの？」

　たぶん１週間の断食中、夢にまで見てた御馳走を目の前に置かれたらこんな気分。

「めっちゃ、解いていいの」

　力強い肯定の言葉を頂いた。

「　――これ、何の乱数？　」

　疑問符は当然の権利だと思う。

「ＯＺの管理棟のセキュリティ解除のための乱数」

　真顔で、答えてくれた。

「――　ワンモア、プリーズ？　」

　うっかり英語が出た。

　――国家予算をはるかに上回るアレ並に！！？

「おまえらの作ってたハッキングＡＩはＯＺに売るのが最も平和的処分だっつって、話を持ち込んできたのはお前の方だろうが」

　相手のいらいらした声に、ぐうの音も出ない。

　――売ったの俺じゃないのに！　売ったの俺じゃないのに！！（涙）

「ついでの保険に」

　ぐいっと引っぱりこまれるようにして、約一名の見慣れたアバターが窓に顕れた。

「おまえの義弟も、等しく責任を負ってもらうことになるぞ」

　言葉が出なかった。

「――　ううう、健二さん、助けてください　」

新しく顕れたのは、平面の猿のアバター。

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