⑬―２

　「ラブマシーンを捕まえて閉じ込めて落として愛でるぜスペック満杯愛情一杯マンパワーはそろそろデスマ―チです助けてア●パ●マ●大作戦」は成功した。

作戦名が長いのはどういう仕様かだと？

気にするな。寿限無よりは短い筈だ。

ひらがなで書くと１０４文字の別名を「長名」と題される落語噺を引き合いに出す小磯健二だった。

無事にとらえたと。

ほっとしたとき、エラー音は響いた。

――――――――ああ、全てが終わる。

「逃げろ、カズマ！」

竦んだままの英雄に指示をした。

「あ………」

想定外の事態に彼は戸惑ったのだろう。

　一度安堵したあとの非常事態なだけに仕方がない。

「―――――――食われたいのか！！」

仮ケンジを移動させようとしたが、動かない。

　稼働熱の過負荷によって落ちたスパコンのせいだろう。

　動かそうにも、それを主軸としたアバターが思うように動けない。

　―――こんなことなら、別のサーバーを使用しておくべきだったか。

　振り上げられたその黒い拳で、キングは飛んだ。

　二度目の敗北。

タイムリーに訪れたのは、作戦失敗の原因。

「…まえのせいだっ」

おっとこ前に、一発で大の大人を貼り倒した中学生のすばらしさに拍手もわこうというものです。

…しませんでしたけど。

「大丈夫か、太助の息子……」

「おまえのせいだ！」

怒りに溢れる少年の思いもよくわかるが、この暑さの厳しい中で遺体を保たせることの大切さを知っていただけにそのへんの配慮が欠けていたかと反省していた俺は。

　―――――声をかけようとした相手に責められた。

垂れた鼻血を押さえながら、太助の息子は続けた。

「―――おまえがきてからろくなことがない！　佳主馬には殴られるしよ、婆ちゃんは死ぬしよ…。おまえなんか…っっ！！！」

おまえのせいだ！

苦い記憶が蘇る。

　その罪を。己の夢を。―――ああ、否定は叶わぬその言の葉。

　　―――――全ては俺のせいだ。

　　なぞらえるように、その音を噛みしめた。

知っていたから。

覚えていたから。

己の失態を。

たとえ、それが覚悟していたものであっても。

　己の大切な陣内家の一員に詰られたことに強い衝撃を覚えた。

　ワールドクロックが変異する。

　そのことに気づいて、振り向いた。

　衝撃を嘆く間もなく、ストーリーは展開する。

　俺は大丈夫だよ、皆。

　満足して死んでいった祖母の死をろくな事がないと言った青年に眼差しを厳しくした理一の表情を見た。

俺たちはまだ戦いのなかにいる。

御紋はこのシーンが嫌いじゃないのかもしれないな。―――きっと、彼らが彼らであるために必要なものだったのかもしれないからだろうか。

　翔太の行動にも突っ込みはあれど、健二の迂闊さを責める人がいるべきだったということなのかな。

[1回]