「おーい。勘右門。――今日の宿題集めてんだろー？」

　頭をかきながら持ってきたのは久々知兵助。豆腐大好きな豆腐小僧だ。

「……あ、そう言えば今日までだったっけ？」

　手に持っているその巻紙を見て、昨日の実習のレポートを提出しなくちゃいけないことを思い出した。

「え？……まさか、勘ちゃん？」

　また、宿題のこと忘れてたの？

　ひくりと頬をひくつかせて、久々知は勘右門の肩を掴んだ。

「―――明け方にね、ピンク色の雷様が俺の部屋の隅で鳴いてね…」

「ばっきゃろー！！　むしろ、いま俺が泣いてやんよおお！！」

　優しい友人は、泣きながら勘右門の課題のレポート作りに協力してくれた。

　今日の昼食に豆腐の味噌汁が出たら、そっと差し出そうと勘右門は思っている。

「―――あ。俺、今日のご飯大盛りでよろしく」

　今日の給食当番が久々知の班だったので、そう付け加えておいた。

　給食の量にはまだまだ物足りない勘右門にとっての最大の感謝であることは御理解いただきたい。

　ぼろぼろの友人を置いて、先生のもとへ向かった。

「――…いい度胸だなあ。尾浜」

「は…？」

　受け取った課題を見ながら、呟いた先生に出席簿で頭を叩かれた。

「――殆ど久々知の筆跡なんだが」

「………えへ？」

　二回目は、角を使用された。

　出席簿の角は痛いです、先生。

「ちえ、楽だったのになあ」

　呟きながら、×ゲームの生物委員の脱走生物探しに向かった勘右門だった。

　尾浜勘右門は、普通の生徒です。

　忍術学園に所属している、将来は優秀な忍者を目指しているというだけの。

　友人も大好きだが、楽できるところは楽をしたい普通の少年です。

「――本気で忘れてる日だって、一応あるんだけどねえ」

「あ？　なんかいったか？　勘右門！！」

　虫籠片手にいわれた。

「いやいや、気にしないでいいよ」

　にっこり。

　網を片手にそう答えた。

「ははは！！　相変わらず、胡散臭いなあ、勘右門は！！」

　笑顔で答えた相手は本能の塊なため、ごまかしにくいです。

「あーあ。…おなか減った」

　昼食がまだ食べれないことが、哀しい勘右門だった。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　了　ｂｙ　御紋

　初落乱！！

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