二次創作、版権に絡んでおります。 やおいが分からない方、嫌いな方は訪れないことをお勧めいたします。申し訳ありません。 pc・携帯両用サイト。 (検索避けスミです)
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41歳健二さん!
18
「…おばあちゃん、だ」
涙を零しながら呟いたのは少女。
その視線の先には、在りし日の尊い人が映しだされていた。
『ようこそ。またお会いできたね』
手に持った扇子を着物の袖から仰ぎながら、映像の中のその人は告げる。
『ふふ。頑張ることだ。――私だって負けやしないよ』
花札を前に並ぶ人影へと振り向いて、その人は胸を張る。
『――だって、私は陣内家の16代目当主だからね』
面白げに笑って見せた。
その人の座る姿は、いつもまっすぐだった。
「…ああ、これは」
健二さんが?
呆然とした口調で尋ねてきたのは万里子さんだった。
映しだされた映像は時折、モノクロの古い映像を挟む。
『…おや? 何撮ってるんだい』
困った笑顔で笑うのは優しく賢い人の若い姿。
「―――うちにあった件の盆と正月の花札大会の映像と、爺さまの宝物もまぜて編集しておきました。昔の絵も混ぜて笑いの一つもとれればいいかと思いましてね」
…まさか、こんな席での放映になるとは思いもしませんでしたが。
沈黙の内で並んで見始めた陣内家の家族たちとともにその映像を見る。
「ああ。―――これは、お袋がまだ若いころの写真か」
万作さんが思いだしたように、ぽつりと呟いた。
「ええ。町内会のイベント用のカメラで撮りまくったと爺さまが自慢してた奴です」
決して、それは自慢することじゃねえよ。爺さま。
突っ込みつつも、『でもいい仕事したよ!爺さま!!』と褒め称えたのは昔の俺です。歪みない。
『夢をごらん、時をごらん。――おまえたちの進む道は平坦なようでどこかが歪に歪んでいるよ』
泣きだしそうな子供たちを前にしながら、その人は語りかける。
『歩くことは困難だろう。駆けることも困難だろう。―――疲れたのなら休むといい、転んだのなら足元をもう一度見つめ直すといい』
―――爺さま。…俺は幸せだと思う。
古い映像のなかで栄に叱られている兄弟たちが見える。――万助さんの頭は丸刈りな状態で、万作さんの顔にはまだ眼鏡がのってなかった。
『泣いてもいい、怒ってもいい。それはお前たちの血肉になる。――そして、掴み取るといい』
――この方に出逢えたことを幸せだと思える。
『――生きるということを愛せたなら、それはおまえたちの勝ちだ』
モノクロの映像の中で、最初に泣きだしたのは幼い少女。――もう一人の、先に亡くなった陣内家の長男がしっかりと手を結んで慰めていた。
「健二、さん」
振り向くとそこには、揃ったその子供たちの老いた姿。
「「「―――ありがとう」」」
笑んでそう告げる三人の兄弟たちに、あの人の思いがもう通じていることを知る。
―――― あの人の全てが、彼らにはもう受け継がれていることを理解した。
「……こちらこそ」
―――あの方を受け継いでくださって、ありがとうございました。
青い夏の空の一角に噴きでた水は空気を濡らして、少しばかり皆の涙腺を弱くしたようだった。
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映画「サマ―ウォーズ」が大好きです。
健二さん至上主義。カズケン信者。栄さま神格化傾向あり。――――――です(笑)。
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