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二次創作、版権に絡んでおります。 やおいが分からない方、嫌いな方は訪れないことをお勧めいたします。申し訳ありません。 pc・携帯両用サイト。 (検索避けスミです)

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…涙の音を聞いたものはいるのだろうか?



   書いてて、なんだけども。
  
   本当の涙の音というのは、あるんだろうか?

   私は聞いたことがない。
   なぜなら、涙はふいに落ちて、ふいに褪せる感情の現れたものであるからだ。

   不思議なものだ。

   涙は私にとって、音ではなく触れるものであるのだろう。
   時に手で、目で、空気で。
 
   瞬く間に、こぼれて失うもののような気がする。

  ―――そんな涙は、いつか現実に乾くのだけども。



  【涙が落ちる音は聞こえない】


【涙が落ちる音は聴こえない】

                        2010.03.01.

 

『先生と池沢君って、知り合いなんですか―?』

『う…うん。―――ちょっと、昔のね。…知り合いだよ』

『…そう、昔の…知り合い』

 初めての授業の後で、聞いてきたのは好奇心にあふれた女友達。

 困ったような目線のままで、答えた小磯健二を佳主馬はひどく冷めた視線で見つめた。

 ――――うそつき。 

 目の前に見えるその細い首を絞めてやりたい。

 丸くカーブした耳朶を、強く強くかみしめて。

 

―――――おまえが、殺した恋をかえせ、と詰ってやりたい。

 

 

 

 

 

「あなたが、この大学にいるなんて思わなかった」

 場所は、小磯健二の使う小さな室内。

「―――こっちだって、今さらキミに出会うなんて思ってなんかなかったよ」

 小さく見える気がした。

 あの夏の頃よりも伸びた身長はいつのまにか、健二のそれを追いぬいていた。

 少しばかり清涼感のあるコロンの匂いがただよう健二の髪の毛を見つめながら、佳主馬は告げた。

「必修項目である以上、あなたの講義は受けましょう。―――ですが、もう僕とは関わらないでください」

 ――――軽蔑しました。

 言い捨てるようにして、佳主馬はその部屋を出ていこうとした。

 ふいに立ち止まって、佳主馬は健二を振り返ることなく最後の本音を呟いた。

「あなたにとって、僕はそんな存在でしかなかったんですね」

 

 

 

 

 

 ぱたりと扉は閉じられて、佳主馬は苛立ちを隠せぬままに、荒い足音で歩いていく。

「…くそっ」

 長く伸びた黒いままの髪をむしるように掻きあげた。

『う…うん。―――ちょっと、昔のね。…知り合いだよ』

 苛立ちが収まらない。

 交わした逢瀬を否定されたようで。

 出逢った夏の日々を拒絶されたようで。

「――――もう、乗り越えたはずだろう。―――恋なんて」

 

 喪失したはずの恋が生きていることを、佳主馬はまだ認めない。

 

                                  了 by御紋

「―――じゃあ、キミにとっての僕は何だったの?」

残された室内で、独り呟いた健二の言葉は、佳主馬には聞こえない。

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