キャラ壊れたっていいじゃないか。単独作品つーかネタ⑧

「誰より早く立ち上がれ。それが戦士の証だろう！　」

　　　　　　　２０１０．１１．１２．

　　　×　年齢操作あり、侘介ファンは要注意です。

　蒼天のもとで、陽と陰の間に立っている。

　いつか皆が辿りゆくその路へ、只一人先立った人を想いながら。

　傍に感じる人肌だけを頼りにして。

　生きていくための支えになる人を、ただ求めて信じている。

　寄り添いあう彼等を見つめる。

　夏の強い日差しが生んだ濃い影に潜みながら、突然の大切な存在の消失をなんとか自分たちの中で消化しようとしているんだろう。

　誰もがその屋敷の内で耐えている姿に背を向けて。

　一人、庭に立ち、外を眺めるのは理一だ。

　…らしい話さ。

　あれは、見栄っ張りでやせ我慢。

　笑いながら、敵を殺してみせるだろう。

　たとえ大切な人が死んでもなお、あれは胸を張って戦いの場へ出るだろう。

　たとえ、どれほど魂が慟哭で泣いていても、あれは護るべきものを間違えない。

　―――　味方さえも煙に巻いて、大切な人を護るだろう。

「……」

　そんな理一の傍らに座って俺は逆の事をするまでだ。

　ぷかりと浮かぶ雲もなく、今日のお日様は絶好調で蒸し暑い一日を提供してくださっている。

　日本の気候からだいぶ遠のいていた我が身としては、身長で勝ったことがないクソ羨ましい友人の影に隠れたくなるのも道理ってもんだろう？

　理一はたった一人で外を見つめて、今起きている世界の混乱を睨みつけているかのよう。

　こいつの仕事先については詳しくは聞いてないが、漏れ聞く噂じゃあだいぶ灰色に近い場所らしい。

　そんな場所から流出してきた世界の混迷状態が、こいつの脳内で巡ってるに違いない。俺の持ってる情報よりももっと厳しくて深いものが、こいつの脳内にはあるんだろう。

「……　ごめんな」

　ぽかんと、宙に浮いた謝罪の言葉。

　神様にではなく、戦士に一言告げてみたくなった。

　ぴくりと震える指先さえも、俺の前でさえ顕わしやしない。

　当然か。

　お前は、もう一人だけ。

　戦場の淵に佇んでいる。

　故郷のために、故国のために、世界のために。

　家族のために。

　自らの心を、深い深い奥底へと押し込めている。

「　でもやっぱり。――　俺たちだって」

　零れる言葉を言うべきじゃないと知っているのに。

　感情が満ちあふれていく。

　押し込めていた分だけの圧力に逆らうように。

　いま、一滴の言葉がこぼれ落ちたそれをきっかけにしたように。

　溢れた感情が、逃げ場所を求めている。

「俺たちだって、護る人になりたかったんだ　」

　見つめる先には、支え合う家族たちの姿。

　守りたかった、人々の営みの光景。

　身をかがめて見つめたその人たちに見られないように、自分の腕で顔を隠した。

　理一は、何も答えない。

　ただ、奴は世界を見つめたままで。

　自分の心を殺している。

「…だけど」

　理一。太助。―――侘助。

「――　俺たちにだって、まだ戦う手段は遺されている　」

　強がりだっていいじゃないか。

　それが、いつか立ち上がる力になってくれるなら。

　ぐらぐらと揺れる不安定な立場の上で、胸を張って笑ってやろう。

　それが、守りたい人々の安堵に繋がるというのなら。

　奥歯を噛み締めながら、―――大人たちはいつだって笑ってみせる。

「　さあ、合戦だ　」

　――　戦場に立つのはいつでも、守りたい人がいる人々。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　了　ｂｙ御紋

　…泣いちゃったよ。（あたしが・△・）

　健二さんは本当に親しい人の前じゃないと泣けない人。嫁の前では、プライドとぎりぎり。

　最後まで心おきなく弱音を吐くのは、昔からの友人たちの前だけです。

[1回]